親指をしゃぶると自律神経が整う

いきなりですが、子供が不満を感じたりおもしろくないことがあると指をしゃぶりますよね。しかも決まってしゃぶるのは親指です。それはどうしてなんでしょうか。

かつて講師をしていた医療専門学校の図書館で東洋医学の専門誌を読むとなく眺めていた時のことです。「下関(げかん、ツボの名前です)に鍼を打つと花粉症が治る」という記事に目が留まりました。頬骨の下のちょっとくぼんだ所にある経穴なのですが、ここに鍼を打つと自律神経のセンター、翼口蓋神経節を刺激して花粉症の症状が収まるという説明でした。

私は鍼灸の資格を持ちませんから「そういうものか」と感心しただけだったのですが翼口蓋神経節からの「誘い」は思いがけない形でやってきました。ウチの治療院においでになったのは80代の男性。「50年前の蓄膿症の手術以来頭痛が治らない」というスケールの大きな愁訴です。私が幼稚園児のころからの頭痛をどうにかしてほしい、というご依頼だったわけです。さてどうしたものか。

その時思いだしたのが翼口蓋神経節でした。花粉症と蓄膿症とのイメージが私の頭の中でつながったのでしょう。ただ先にも書いた通り私には鍼灸は使えません。それで思いついたのが口蓋骨の調整でした。上顎の奥に左右一対あるL字状の薄い骨です。ゴム手袋をはめて中指の腹を上顎の奥、喉の際に当てて動きを触診します。口蓋骨も頭蓋骨を構成する骨ですから脳脊髄液の循環に合わせて動きます。喉の奥でへばりついて動かなくなっていた口蓋骨を本来の動きをするように調整しました。そうして1週間後、驚いたことに(私は治るのは当たり前やんか、という顔をしてはいました)50年間取れなかった頭痛がうまく改善してくれたのです。おそらくは自律神経のバランスが口蓋骨の調整で改善してくれたのでしょう。

ところで「モンチッチ」というお猿のぬいぐるみをご存知でしょうか。モンチッチの特徴は「指をしゃぶったポーズ」を取らせることができる点です。そうして彼がしゃぶるのも決まって親指です。子供が何かストレスを感じて指しゃぶりをするスタイルを踏襲しているということです。それはどうしてかというと親指をしゃぶるときに「だけ」指の腹が上顎を刺激するからだと思います。つまり口蓋骨を自分で調整して翼口蓋神経節の緊張を緩和しているということです。親指をしゃぶることはストレスを緩和するための手段であり、そこから転じて「かまってほしい」というボディランゲージとしてモンチッチのデザインに応用されたということなのかもしれませんね。

中学校の同級生に数学の問題を解くときに指をしゃぶる癖のある子がいました。彼が親指を深く咥えて微妙に手首を動かしているのを見ると因数分解を説くのに難渋しているな、というのがはた目からもわかるわけです。「中学生にもなって指しゃぶりはみっともないからやめなさい」と担任に強く注意されることがあったのですが彼は緊張のあまりあろうことかその場で指をしゃぶり始め、それを挑発と誤解した担任が激怒する、という事件もありました。

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