上部頸椎はどうして歪む?

ボディワークを行っている者にとっては上部頸椎は特別な部位になります。古典的カイロプラクティックでは「メジャー」と呼ばれ、上部頸椎のみを調整する技術体系が存在します。私が次の世でも臨床家になれるのであればぜひこれを学んでみたいと思っています。
カイロプラクティックでは自然治癒力(先天的知能という呼び方をされる)は脳幹から生じて全身に伝えられるとされている。なので上部頸椎にサブラクセイション(日本語に直せば歪みとかズレ。整形外科的な亜脱臼とはニュアンスが異なる)が存在すれば自然治癒力が十分発揮されなくなります。だから上部頸椎を適切に調整さえすれば自然治癒力は全身に行き渡り健康を回復することができるというのが根本の原理ということになります。「われ包帯し、神これを癒したまう」の包帯が上部頸椎に対するアジャストメント、神が自然治癒力ということになるでしょうか。
クラニオセイクラルでもこの部位は臨床的に重要とされています。頭蓋底の解放と言って第1頸椎と後頭骨の間を緩める手技があって、ちょっと見簡単にできるけれど、クラニオの中で一番難しい手技であるとクラニオを教わった師匠は言っておられました。
それで、この上部頸椎は、どうやって歪むのでしょうか。ポリヴェーガル理論の書籍で、「何かイヤなことを考えただけでも上部頸椎はすぐに歪む」ということを主張しているクラニオのセラピストがいます。「このような状態(上部頸椎が歪んでいる)では、椎骨動脈に圧をかけ、脳幹への血流を減らし、社会交流に必要な五つの神経の機能に影響を与えます。これは腹側迷走神経優位でない状態へと私たちを追しやります。」、「しかし、危機に瀕して戦うか逃げる必要があるとき、あるいは現在の状況に身体的、感情的に直面できないとき、より高度な機能を遮断することで私たちの生存を助けるのです。」(からだのためのポリヴェーガル理論 スタンレー・ローゼンバーク 春秋社)
つまり危機に直面した時にリラックスモードを解除して逃げるか戦うか、または死んだふりをして敵の目を欺くために上部頸椎は歪む、ということをこの著者は主張しているわけですよ。ローゼンバーク先生はクラニオセイクラルのワーカーですが、「上部頸椎のサブラクセイションは病的状態」というカイロプラクティックの理論と全く逆のことを主張しておられることになります。
いずれにしてもたいていのクライアントは頭蓋底がカチカチで解放するのに難儀します。そうしてそこを緩めると症状も改善してきます。上部頸椎はなんだかとても興味深い部位であります。

