椎体圧迫骨折「ではなかった」背中の痛み

定期的に施術に伺う広島のF医院さまでの話です。毎月拝見しているご高齢のご婦人が、「転んでから背中が痛い」とおっしゃいます。この場合疑うべきは椎体の圧迫骨折です。簡単に言ってしまうとしりもちをついたときに背骨が上下から押しつぶされて発生する骨折です。

しつこい腰痛の原因になることもあります。反張位、逆エビ固めの体勢で整復して胴体をぐるっと固定するのがスタンダードな治療法です。背景には骨粗鬆症がありますけれど、もっと若い方にも発生します。

伺ってみると、受傷直後に整形外科を受診されて画像診断を受けて、「骨折はない」という診断がついています。それなら補完医療がお役に立つじゃろう(広島弁です)、ということで拝見しました。仰向けから起き上がるのが一番辛いそうで、仰向けに寝ることはできるとのこと。それで頭蓋骨を一通り触ってから、脊髄硬膜のストレッチを行いました。脊椎の中を脊髄が通っています。脊髄は硬膜に覆われていて、これがどこかで引っかかるといろんな症状を引き起こします。庭で草引きをするとき、根っこの長いタンポポをゆっくり引っ張るような感じ、と医療関係者にセミナーで教える時は説明しています。

それからもう一か所。鎖骨の下を触診します。PTSDなど、メンタルにトラウマがある方はここに強い圧痛が出ます。圧痛を処置して消すと、トラウマによる症状はきれいに消えてしまいます。それだけではなくて普通にギックリ腰を起こした患者さんの鎖骨下にも圧痛が出現して、痛みが軽減するにつれてこの圧痛も減っていきます。また、心理的なトラウマのケースと同じようにこの圧痛を処置すると、腰の痛みの回復が早まります。

今回のケースでも鎖骨下に強い圧痛がありました。それを処置してから立ち上がってください、とお願いするとしばらく逡巡されました。起き上がるときに一番痛いのですから当然です。そうして起き上がっていただくと…、「あれ、痛くないわ」。

鎖骨下の圧痛の原因はなんだったのか。転んだ時のショックが原因なのか。起き上がるときに痛みが出ることに対する恐怖心なのか。思うように動けないことへの苛立ちか。実際にはそのどれもが原因だったのかもしれませんし、他にも原因があったのかもしれません。ただ、たぶん純粋に外傷性のケガである今回のケースであっても心理的な要因が色濃く影響していたこと、トラウマケアをしたことでほとんど即効的に効果が出たこと(逆に言えばトラウマをケアしなければなかなか治ってくれなかったかもしれません)、など「ココロとカラダの相関」についての気づきがありました。これこそが補完医療の値打ちなのかもしれませんね。

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