ストレスと姿勢の関係

マッケンジーシステム

例えば背中を丸めてとぼとぼ歩いている人を見れば、他に何も情報がなくてもこの人には「何か辛いことがあるのかな」という見当がつきます。でもそれはなんでか。

ストレスの研究で有名な藤井尚治先生によると、ストレスに対する人間の防御反応は屈筋屈位、つまり丸まった姿勢に過剰負担がかかっているといいます。この場合のストレスは精神的、物理的を問いません。つまり私たちは身体のどこかが辛い時も、何か心に悩みがあるときでもだいたいは同じような姿勢を取るということです。

言われてみればその通りで辛い時に胸を張って歩いている人はいませんよね。そうして人間はストレスに対して過剰に防衛反応を起こしやすく、そのことが本来の心身の機能を損ね、自然治癒力を妨げるという説もあるそうです。そういえば一度ギックリ腰になればなかなか治ってくれませんし、イヤな感情はいつまでも心のどこかに引っかかっていますものね。

それから学習に凸凹がある子供さんやチックのある方もこういう屈曲姿勢の方が多いです。「姿勢の悪さ」を普段からご家族に指摘されていたりします。仰向けに寝ていただいたときに股関節がきちんと伸びていないのもやっぱり屈曲姿勢です。

凸凹のある方はあちこちで書いていますように、情報の取捨選択ができにくい傾向にあります。脳のキャパを超えた分量の情報を受け取ることがストレスになるのでしょうか。

腰痛症の治療体操として有名な「マッケンジーシステム」と呼ばれる治療体系があります。腰痛の患者さんにちょうど「腕立て伏せ」またはヨガでいう「コブラのポーズ」を取ってもらう体操です。背中を反らせた(伸展位)を患者さんにとってもらいます。そうすることによって脊柱の前弯を確保して腰痛を治す、というコンセプトです。その際に正常よりも後ろにありがちな髄核(椎間板が破れて髄核が後ろに流れ出た状態が椎間板ヘルニア)も正常な位置に戻るといいます。オリジナルのマッケンジーシステムの作用機序は、あくまでも物理的、機械的な考えです。

腰痛の原因としてストレスが挙げられることはたびたび記事にしてきました。仮に機械的なストレス(重いものを抱えるとか)だけであっても心理的なストレスが絡んできているにせよ、腰痛患者さんは屈曲位を取っておられるわけですからそれを機械的に解除する手段としてマッケンジーシステムは有効でしょう。マッケンジーシステムによって屈曲位が解消され髄核が正常位置に戻ることで腰痛が改善する。何ごとの不思議なけれど、です。

それでね、ちょっと思いついたんですけれどマッケンジーシステムを物理的な構造の改善と考えるのではなく、ストレスへの防御反応の解消と考えてみたらどうでしょうか。「別に楽しいことがなくても笑っているといいことがある」みたいな話がよくあるでしょう?マッケンジーシステム(うつ伏せで状態を反らせる、くらいの意味です)を応用することでストレスケアができるかも、と考えて別に腰が痛くない患者さんにも体操をやってもらおうと考えています。「また変なこと言いだしたな」とか思われそう。

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