骨盤は歪まない、でも「骨盤矯正」が効くわけ

骨盤矯正

骨盤矯正を標榜する治療院はたくさんあります。何を隠そう三十数年前に私が開業した時にメインで使っていた手技も骨盤矯正でした。「骨盤がズレている」「歪んでいる」という根拠は下肢の左右差で、確かにギックリ腰の患者さんの下肢長には極端な左右差がありました。(たいていのケースで右脚が短い)骨盤を調整すると下肢長差は改善して、あれだけ辛そうだったギックリ腰も改善します。

いわゆる西洋医学、整形外科学では「骨盤は歪まない」「骨盤の仙腸関節は不動関節だ」と言われていると手技療法のセラピストは主張しますが実はそんなことはありません。整形外科学的検査法には骨盤、仙腸関節の検査法だってちゃんと昔から存在します。簡単に言ってしまえば骨盤にストレスをかけて仙腸関節に痛みを感じるかどうか調べて痛みを感じるケースが陽性、骨盤に問題ありということです。当たり前やんか、と思うでしょう?

ところがね、腰が痛くて下肢長に極端な左右差がある患者さんでも骨盤(仙腸関節)の整形外科学的検査法で陽性になるケースは少ないんですよ。骨盤矯正の施術を行っている治療院でも下肢長差は調べても整形外科学的検査は行わないところのほうが多いんじゃないかな。

さらに腰に何も症状のない患者さん、例えば学習障害やチックの強い方の下肢長を調べてみると左右差が著明に認められます。それで私は下肢長の左右差が生じる原因は骨盤のズレや歪みによるものではなくたんに骨盤周囲の筋肉の緊張によるものではないか、と考えるに至りました。つまり骨盤がズレて腰周辺の筋肉が緊張するのではなく、心身のストレスで骨盤周囲の筋肉が緊張した結果、骨盤が撓んだ状態が骨盤のズレとか歪みと呼ばれる状態ではないか、ということです。骨はプラスティックのような固形ではなく生体時には可塑性がありますから周囲の筋肉の緊張に合わせて「撓み」を生じることになんの不思議もありません。

それならズレても歪んでもいない骨盤を矯正してなぜ下肢長差が解消して腰痛が良くなるのでしょうか。

世間には様々な手技療法があります。よくあるパターンがカラダの一部分だけを調整することで全身の不調を改善できるというものです。足裏マッサージ(反射療法・リフレクソロジー)が代表格ですが、他にも手のひらやらお腹やふくらはぎなどをひたすら揉む治療法があります。そうしてそれぞれの治療法に効果が認められるからこそ治療体系として生き残ってきたわけです。カラダの一部だけを緩めて全身の症状が緩和するのはなんでか。古いオステオパシーの書籍にアメリカの老オステオパシー医のこんな言葉が載っていました。

「人体の可動部分は筋と関節で、これは強い連帯性を持っていますから、一部が『十分に』弛緩すると、次第に全体も弛緩して行きます。(オステオパシーの世界 藤井尚治 科学新聞社1975)

そうであればどこの部位を調整しても同じ、ではなくそうであればこそセラピストの見識とか人体に対する認識とかが出るのでしょう。そうしてそういう目で見てみると骨盤周辺は大きな筋肉がたくさん分布しています。骨盤周辺を緩める(=骨盤を矯正する)ことは効率よく全身の緊張を緩める手立てとして有効だ、というのが正解のように思うのですがどんなもんでしょうか。

ただ、筋肉が緊張する原因がストレスに対する反応であってみれば、せっかく骨盤を矯正して筋肉が緩んでもまたすぐに戻ってしまいます。ストレスに脳が反応して「緊張しろ」という指令を出しているわけですからね。これを解除するには自律神経を調整する頭蓋仙骨療法がよろしかろうと、最後は我田引水のオチがつきました。「骨盤矯正に行った時は楽になるんだけれど、すぐに戻ってしまう」と言いながら長期間治療院に通い詰めておられる方のお役に立ちますように。

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