後頭骨と仙骨のシンクロニシティ

仙骨

脳脊髄液の循環を動力として頭蓋骨は膨張と収縮をリズミカルに繰り返し、その動きは脊髄硬膜を介して仙骨に及ぶというのが頭蓋仙骨療法のメインになる考え方です。

それで後頭骨と仙骨は硬膜を介して同じ動きをすることになっています。患者さんに横を向いてもらい、片手の手のひらを後頭部に、もう片方の手のひらを仙骨部に当てます。そうやって静かに手のひらを当てていると、肺呼吸とは違った動きを手のひらに感じます。これが脳脊髄液の循環のリズムであると説明されます。

後頭骨と仙骨は脊髄硬膜を介してつながっていますから、基本同じ動きをします。戦車とかブルドーザーはキャタピラを介して前輪と後輪が同じ動きをしますが仙骨と後頭骨もそういうイメージです。

ところが硬膜のどこかに制限があるとこのシンクロニシティがうまく成立しません。その時は両手のひらをそのまま当て続けていると、いつの間にか後頭骨と仙骨の動きが同じになっています。頭蓋仙骨療法のテキストにも載っていますし、筋膜リリースの手技として行われることもあります。

あるとき広島のF先生のクリニックで腰痛の患者さんを拝見する機会がありました。それがね、脊椎の圧迫骨折の既往がある方だったのですよ。高齢者がしりもちをついて転ぶと、胸椎と腰椎の境目のところで脊椎の圧迫骨折が起きることがあります。背骨(椎体)の前方が潰れます。脊髄が通っているのは脊椎の後ろ側ですから脊髄症状や根症状が起きることはないのですが、患者さんは骨癒合後もしつこい痛みに悩むことになります。

私の目の前で横になっておられるのがまさにそういう患者さんです。もとより普段の頭蓋仙骨療法の施術のように仰向けになっていただくことは困難です。椎骨の調整と言われてもそれも難しそうです。それで、せっかく横向きで寝てくださっているのだし後頭骨と仙骨のシンクロニシティを回復させることにしました。

患者さんの後頭骨と仙骨に手のひらを当てても両者の動きにシンクロニシティを感じません。なんて言うのかな、後頭骨も仙骨も勝手に動いているような印象なんですよ。それで私は仙骨に当てていた手のひらを、骨折部に当ててみました。そうやって後頭骨と骨折部のシンクロニシティをまず回復させてみました。

次に後頭骨に当てていた手のひらを骨折部に移動させて、今まで骨折部に当てていた手のひらを仙骨に当てました。両手の動きが同調したところでもう一度後頭骨と仙骨に手のひらを当てて着ると、今度はうまいこと両手の動きがシンクロするようになっていました。

そうやってしばらく手を当ててから、ベッドから降りていただくと…。おお、うまいこと痛みが軽減したようです。残念ながら意思の疎通をやや欠くところがあって、詳しい症状の変化を伺うことはできませんでしたが機嫌よくすたすた歩いて帰られたことでした。

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