バレ・リュウ症候群またはこじれたむち打ち

頭痛

むち打ちの処置が不適切だと不定愁訴の原因になる

むち打ち損傷で急性期以降の処置が不適切だと症状がこじれることがあります。具体的には後頭部・項部痛、めまい、耳鳴り、視力障害、顔面・上肢・咽喉頭部の感覚異常、夜間上肢のしびれ感などの不定愁訴、と教科書には載っています。場合によってはこれに根症状、手のしびれ感が加わることがあります。しかも症状は一定ではなく、「今日は頭痛、明日は耳鳴り」みたいなこともあります。これらの不定愁訴を呈するむち打ち損傷を「バレ・リュウ症候群」とか「頚部交感神経症候群」とか呼びます。

こじれたむち打ちは他覚所見に乏しく医療機関で相手にされないことも

気の毒なことに、これだけ辛い症状があってもバレ・リュウ症候群は他覚所見に乏しいです。つまり画像診断にも徒手検査にも引っかかってこないということです。さらに原因が追突等の事故ですから、補償等の利害関係が絡んでくることもあり、患者さんはしんどい思いを強いられます。あからさまに詐病の扱いを受けることさえあるそうです。他覚所見がなければ傷病名のつけようがありませんから病院では取り合ってもらえません。そこで保険会社のアジャスターさんに申し出て整骨院に通院し始めることになります。整骨院では交通事故患者さんは大歓迎です。

整骨院が自賠責の患者さんを歓迎するわけ

街なかの整骨院の看板を見ても「各種保険取り扱い」のほかに「交通事故・自賠責保険」なんて書いてあることが多いでしょう?(本当は各種保険取り扱いを含めて法律に違反している看板なのですけれどね)どうしてか?むち打ち損傷の治療に精通しているのか?というと、必ずしもそうではないのですよ。

むち打ち損傷、自賠責保険の患者さんが整骨院で歓迎される理由はひとつ、治療単価が高いのです。

自賠責は自由診療という建前ですが、実は「目安料金」というものが暗黙の裡に定められています。それが普通の健康保険の点数に比べてとんでもなく高額なのです。しかも患者さんの負担金はゼロ円ですからきちんと通院してくださる。ということで商売上非常にうまみがあるということは覚えておかれてもいいかと思います。

ひたすら揉んでも骨をボキボキ鳴らしても自律神経の問題は改善しない

整骨院での治療は仄聞する限りでは二通りに大別されます。ひたすらに揉むか、むやみに骨を鳴らすか、です。バレ・リュウ症候群の患者さんは筋肉の緊張が強いですからこれをひたすら揉み解します。先に書いた通り、自賠責の患者さんは高単価ですから一般の健康保険の患者さんより長い時間をかけて揉み解しを行います。それに患者さんも満足?してくださるのですけれど症状は一向に改善しません。

骨をバリバリ鳴らすのが好きな整骨院もあります。関節を鳴らすと一種の爽快感がありますから施術後は気分がいいです。筋肉の緊張もその時は緩みますから「このまま治るんじゃないかな」と期待もできます。でも、脊椎をバリバリ鳴らす(これを直接法とか高速度低振幅とか呼びます)と骨格をつないでいる靭帯がだんだん緩んできます。関節が不安定になってくるということです。不安定な関節を安定させるために周囲の筋肉はまた緊張します。それをまた骨をバリバリ鳴らして調整する、靭帯がますます緩む、周囲の筋肉が緊張する…、という悪循環になってしまいます。要するに喫煙で解消できるストレスはタバコを喫えないストレスだけ、というのと同じで繰り返しの直接法は決してバレ・リュウ症候群を改善することはできないと思います。

そうして自賠責保険が切れてしまうと長時間の揉み解しも爽快な直接法も受けることができなくなり、症状だけは残ってしまいます。うちの整骨院においでになるのはこうなってしまってから、ということが結構あります。

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