骨盤矯正は無意味か

「知恵袋」というのを見ていたら「骨盤矯正は無意味か」というQ&Aにたくさん投稿がありました。こういう話に皆さん興味があるのは、やっぱりあっちこっちの整骨院で「骨盤矯正」というメニューが流行しているからなのでしょうね。皆さんいろいろ言っていますけれど、この議論?に終わりも意味もありません。どういうことでしょうか。

まず第一に、「骨盤矯正」に統一された術式はありません。骨盤を矯正する、と称する手技はそれこそいくらでもあります。日本で行われている手技療法だけでも整体やらカイロプラクティック、オステオパシーと様々です。整体には無数に流派がありますし、カイロプラクティックやオステオパシーにはたくさんのテクニックがあります。そうしてそれぞれに骨盤矯正の手技の術式があるわけですよ。そういうのを全部まとめて有効か無効か論じることに意味はありません。

それから術者のレベルがあります。資格の有無、それから手技の習熟度、さらに(言いにくいのですが)器用不器用という先天的なものがあります。そういう条件を無視して骨盤矯正の有効性を論じても、プロレスラーから小学生(幼稚園児?)までいろんな年齢体格の人間がひとつのリングに集合してバトルロイヤルをやるようなもので、そもそも試合として成立しません。

さらに骨盤矯正を受診する目的というか動機がまちまちです。腰痛の治療が目的なのか、産後のプロポーション維持が目的なのか、妊活か、その他の症状の改善が目的なのか。それから同じ腰痛と言っても急性のいわゆるギックリ腰なのか慢性の腰痛なのか、ヘルニアや骨粗しょう症などの基礎疾患はあるのかないのかについて条件がそろっていないと骨盤矯正の有効無効を論じることは不可能ですし論じても無意味です。

そういう議論にもならないグタグタの雑談が繰り返し投稿されるのは、骨盤矯正を宣伝したい人と貶めたい人とがそれだけたくさんいるということなのでしょう。

私の経験だけでいうと、慢性の腰痛で仙腸関節に痛みがある人に、オステオパシーのストレイン・カウンターストレインという手技を用いるとよく効きます。出産後の疼痛が改善しないという人の恥骨結合にはたいてい圧痛があって(患者さん自身に確認していただいて術者の私は恥骨の触診はしません)、こちらは同じくオステオパシーのマッスルエナジーテクニックに良く反応してくれます。

急性の腰痛なら腰椎の調整のほうが効果がありますし、上記の骨盤矯正が奏功しない時は頭蓋骨や頸椎の調整で腰痛が改善することもあります。ようは「やった」「効いた」「治った」に終始しているわけで、臨床家としてはそれで必要にして十分だと私は考えています。逆に患者さんの立場からすれば今お困りの症状が改善する(した)のであれば、その骨盤矯正を受ける価値はあるでしょうし、症状に変化がなければ(好転反応です、と言われても同じ)少なくともその骨盤矯正を継続して受ける意味はないでしょう。骨盤矯正だってほかの治療法と一緒で、効果があるものには効果がありますし、ないものにはありません。そうしてそれはあくまでもあなたの個人的な経験で、骨盤矯正一般に普遍化することは不可能です。

重要な追記。「知恵袋」の投稿に、あちこちの骨盤矯正にいったけれどどこでも「右の骨盤が下がっている」という見立を受けた。だから骨盤がズレるというのは疑いようのない真実だ」というのがありました。

例えばうつ伏せで寝ころぶとたいていの人は右脚が短いです。これは何度か記事にした通り、直立歩行している人間が地球の自転の影響を受けていることに起因する現象です。その証拠に腰痛の全くない人でもそれどころか全く健康な人でも下肢長の長短差はあってたいがい右が短いです。これをもって「骨盤がズレている」と主張するセラピストの頭の中はきっとズレています。

実は「知恵袋」を斜め読みしていて一番引っ掛かったのは骨盤矯正の施術料が「10回12万円」だったことです。骨盤しか触らずに1回1万2千円。うちも真似しようかな。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です