恥骨結合(もうひとつの骨盤調整)

恥骨結合

骨盤調整、またはそれに類する治療法では基本的に骨盤の後ろ側、仙腸関節を調整します。でも本来、もっと可動性の大きな関節が骨盤にはあります。それが恥骨結合。「骨盤が動くわけがない」という主張をする人でも「恥骨結合を除いて」という注釈が入ります。どうしてかというと出産時には恥骨結合は必ず動くから。

出産時に動いた恥骨結合が、完全に元の通りに戻らずに少し「ズレ」たとしたら骨盤輪は当然歪みます。各種の手技療法にも恥骨結合の調整法のマスターは存在します。ただ、部位が部位だけに術者の手根部でアジャストするのも金属製の矯正具で「パチン」と調整するのも、術者にも患者にも躊躇があります。

それで、「出産後に腰痛を発症した」というケースや交接痛を合併しているケース、仙腸関節の調整だけで奏功しないケースなんかを除けばまずは仙腸関節の調整で様子を見ることが多いです。本当はよろしくないのかもしれませんが。

恥骨枝そのものは外力を受けやすく骨折しやすい部位ではあります。ただ、あんまり「恥骨の辺りが痛い」という症例を拝見する機会はありませんでした。

定期的に拝見している患者さんが珍しく「腰が痛い」とおっしゃいます。「腰のどのあたり?」と伺うと、右の仙腸関節からぐるっと前のほう、恥骨結合までを指されます。特に何かをしたという記憶はなく、ただ歩いているときによろめいて股関節を内転強制されたことは一回あったかな、との話でした。

まずはうつ伏せになってもらって坐骨結節を押圧します。太腿の裏側、ハムストリングスの緊張をとるためです。それから仰向けで膝を立ててもらい、その位置から股関節を開く方向に力を入れてもらい抵抗運動をします。恥骨枝には内転筋がついていて、恥骨結合に問題のあるケースでは内転筋が緊張していることが多いからです。最後に患側の仙腸関節を調整して終わりです。立ち上がってみてもらって痛みがないのを確認して治療終了です。

読み返していただいてわかる通り、私は恥骨には触れていません。必要があって触診するときも患者さんにご自分の恥骨に手を当てていただき、その上から圧迫して圧痛を確認します。何度も言うようにあんまり褒められた行為ではないのですが。

恥骨結合の「ズレ」は腰痛のほかに交接痛という深刻な症状をもたらします。オステオパシー仲間に大学病院の助産師さんがいたのですが、妊娠7か月目以降の腰痛と出産後の交接痛だけはかなわんわ、とぼやいていたのを記憶します。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です