矢状縫合と百会
頭のてっぺん辺りの骨を「頭頂骨」と呼びます。左右一対あります。2つの頭頂骨が関節している継ぎ目のところを「矢状縫合」と呼びます。
鍼灸のツボに「百会」というのがあります。ちょうど頭の一番てっぺん。左右の耳の穴をつないだ線と、矢状縫合が交わる点が百会になります。それでこのツボ、「痔」に特効があるとされます。痔疾のある方の百会にちょっとしたでっぱりを触知することもあります。それから、矢状縫合を調整していてちょうど百会のあたりに変な制限を感じたことがあって、「お尻の具合、悪くないですか?」と伺うと果たして痔疾で困っておられた、ということもあります。
頭蓋仙骨療法の施術を行っていると、たいていの患者さんは眠ってしまわれます。眠るポイントというのが患者さん一人一人にあって、今まで何やかや喋っておられたのが急にスイッチが切れたように眠りに落ちられます。頭蓋骨の動きの制限が強いところが緩んだタイミングで「寝落ち」のパターンが多いです。心身が修復モードに入るからかな、と勝手に思っています。
もうひとつ、頭頂骨とか矢状縫合を調整しているときにスイッチが切れる患者さんも多いです。「頭頂骨リフト」といって、頭頂骨をテコにして脊髄硬膜、脳硬膜をストレッチする手技があります。それから矢状縫合の下には静脈洞が走行していて、ここを解放して脳脊髄液の循環を促進させる手技があるのですが、この二つの手技を行っているタイミングで眠りにつかれる方が数の上では一番多いように思います。はじめのうちは「この方も痔なのかな」みたいなことを思っていたのですが鍼灸師の家人に訊いてみるとそれは私の勘違いであることがわかりました。
百会という名前の由来は「たくさんのツボの通り道が交わるところ」とでもいった意味で、確かに痔疾にも著効はあるけれど、自律神経の流れを整える働きがあるのでいろんな症状に効果があるのだそうです。肩こりや頭痛はもとより胃下垂などにも効果があるらしいです。それから精神的なストレスを緩和する働きがあるといいますから、頭蓋仙骨療法で頭頂骨や矢状縫合を調整していて患者さんがリラックスして眠るのはむしろ当然のことなのですね。
アメリカで生まれた手技療法である頭蓋仙骨療法と、中国で古来から行われてきた東洋医学とが同じようなことをやっていたのが不思議でもあり興味深くもあります。