脳脊髄液減少症、本当に髄液が漏れるのが原因か

脳脊髄液減少症

脳脊髄液循環のメカニズム

脳脊髄液減少症、という名前は聞かれたことがあると思います。脳と脊髄は、硬膜という丈夫な袋の中で脳脊髄液という液体に浮いています。スーパーで売られている豆腐や水煮のタケノコのパックをイメージしていただけるとわかりやすいです。液体に浮かんだ状態なので、脳や脊髄は外的ショックから守られていると説明されます。

それで脳脊髄液は脳の脈絡叢というところで産出され、クモ膜顆粒という部位から吸収されます。脳が脳脊髄液を吸ったり吐いたりしているわけで、このことを「第1次呼吸」と呼んだりします。酒風呂に入っているオジサンがストローで自分の浸かっているお酒を飲んでいる状況をイメージしてみてください。それで浸かっているお酒の量が減って水面(酒面?)が低くなったところで追加のお酒をバスタブに入れてもらいます。そこで水面の高さは元に戻ります。またオジサンがそれを飲んで、お酒が減って水面が下がれば追加のお酒がバスタブに…。

自分の出汁?で味付けした燗酒がおいしいかどうかは別にして、一定のリズムでバスタブの水面が上がったり下がったりするのはお判りいただけるでしょうか。脳脊髄液の循環、第1次呼吸というのもこれと同じで、脳脊髄液の産出と吸収との間にタイムラグがあります。頭蓋骨が脳脊髄液の循環に合わせてわずかに動く原動力はこの時の(酒風呂の水面の高さの)ギャップによるものとされています。

脳脊髄液減少症の患者さんを拝見して思ったこと

脳脊髄減少症では、文字通り脳脊髄液が減少したことにより脳が正常な位置を保つことができなくなり起立時の頭痛や頚部痛、倦怠感、めまい、吐き気などの症状が起きます。髄液が減少する原因は、というと外傷性のものが多いとされています。交通事故などで硬膜に穴が開きそこから髄液が漏れ出るというふうに説明されます。でも外傷歴のないケースもかなりの割合でみられるといいますから、実際のところよくわからないのかもしれません。

それでね、脳脊髄液減少症の診断がついたケースは2例しか診たことがないので大きなことは言えませんが、本当に脳脊髄液は硬膜から漏れ出て減少しているのか、というのが私の素朴な疑問なのですよ。

2例とも交通事故が原因。それでお二人とも頭蓋仙骨療法に良く反応してくださいました。お一人は一回だけの施術だったのですけれど施術中爆睡。術後は症状は消失していました。その後のことは残念ながら不明です。

もうお一人は同業の先生のご紹介でおいでになりました。いろんな医療機関でいろんな診断がつき、その中に脳脊髄液減少症もありました。

脳脊髄液減少症の定型症状よりはむしろ頚部交感神経症候群の症状と思われるものが顕著に出ていました。いろんな症状が日替わりで出現しては消えていくような状態でした。術後はこちらも好調で、ご家族からは「社会復帰できて嬉しい」と喜んでいただけました。

頭蓋仙骨療法は頭蓋骨をテコにして硬膜を調整し、脳脊髄液の循環を促進する治療法です。もし、硬膜に穴が開いて髄液が漏れていたのであれば頭蓋骨や硬膜を調整しようがどうしようが、術前術後で髄液の量は不足したままのはずで、結果として症状に全然変化はなかったはずだと思います。空気が抜けた風船をいじくりまわしても膨らむ道理がないのと同じ理屈です。

私は体表からの触診以外に評価の手段を持ちませんので減少していた脳脊髄液が増えたのか減ったままなのかはわかりませんが、少なくとも術前術後で脳脊髄液の循環が活発になったことは確認できましたし、現に患者さんは社会復帰を果たしています。

頭蓋仙骨療法の術前には画像診断なりで髄液減少の所見が出ていたのでしょうから、施術中に脳脊髄液が「増えた」ということになります。2例の症例だけで大きなことを言うのは何なんですけれど、脳脊髄液の減少というのは産出と吸収のバランスの崩れではないだろうか、と妄想しています。

脳脊髄液減少症の正体は自律神経失調?

それから、脳脊髄液減少症の症状のかなりが「コロナ後遺症」と似ているような気がします。ひょっとしたら事故のショック、恐怖で背側迷走神経系にスイッチが入ってしまい、その結果出てきた症状が「脳脊髄液減少症」と名付けられたのではないか、ともちょこっとだけ思っています。

そういうことを言っていると不思議なものでね、3例目?を拝見できるかもしれません。

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