手首と自律神経とチック症

手首のケガが原因で喘息になる?

ずっと以前のこと、「骨法」という武術に関する書籍を読んでいました。柔道整復がそうであるように、武術には敵を倒すための「殺法」とケガや病気の治療法である「活法」が存在します。

身も蓋もない言い方をすれば敵を倒すというのは相手のカラダを破壊することです。なのでその逆を行えば破壊された=ケガをしたカラダを回復させることも可能ということです。ちょっとだけかじったことのある少林寺拳法にも活法はありましたし、カイロプラクティックのボディドロップは柔道の技からヒントを得たと聞いたことがあります。

閑話休題。それで骨法にも独自の整体術が存在していて私が読んでいたのはそれについての書籍です。その中に子供の喘息治療の話がありました。筆者の堀部師範は骨法を指導する傍ら整体治療も行っておられました。それで医療機関にさじを投げられた子供さんの喘息の原因が手首のケガであることを見抜き、手首の関節を整復することで軽快させることができた、という話です。当時の私は「へえ、そういうこともあるんやな」とひどく感心しましたが、自律神経の問題である喘息と手首の関係というのはよくわからん、ままになっていました。

蝶形骨の調整も手首でできる?

頭蓋骨を調整するうえで特に重要とされるのが蝶形骨の調整です。頭蓋骨は全部で23個の骨が組み合わさってできているのですが、蝶形骨はその真ん中に位置しています。なので蝶形骨の動きの悪さは直ちにほかの骨に影響します。蝶形骨を体表から触れるのは大翼(こめかみ)だけですので、大翼をテコにして調整することになります。

ところが海外のテキストを読んでいますと、術者が患者さんと左手で「握手」することで蝶形骨が調整できる、と書かれています。その時術者は右手で患者さんの肘を支えます。そんなことで蝶形骨が調整できるのか、と思うのですが実際試してみると家人は爆睡しました。何人かの方にお伝えしたのですが結構効果はある、というご感想をいただいています。

なんで左側に限定されるのか、ということも含めて謎のままですがとにかく患者さんと握手することで深いリラクゼーションが得られることは事実です。つまり手首の調整が自律神経の緊張を和らげる、ということになります。

そうしてチック症の最新療法も、やっぱり手首を刺激していた

以前記事にしたのですが、手首に電流を流すことでチック症やチックへの衝動が和らぐという研究がイギリスで行われているそうです。手首の手のひら側の横じわの中央にパルス電流を流す機会が開発されたというニュースをチック症の支援を行っている方が教えてくださいました。

ちょうどここには正中神経が通っていますので、「正中神経を刺激するとチックが改善する」という形で報じられてはいます。ただし正中神経を刺激しようと思えば肘あたりでも可能なはずで、なぜわざわざ低位での正中神経刺激に限定されるのはやっぱりちょっと謎です。

ただこの辺りは東洋医学でいう「大陵」という経穴で、ここは手のしびれなどのほかに全身をリラックスさせる働きもあるといいます。

ということで中国四千年の東洋医学も、日本古来の武術も、オステオパシー医学の頭蓋仙骨療法も、そして最新の研究結果も、いずれも手首を刺激することで自律神経が整う、ということを主張しています。

手首の関節の調整は、手根管症候群(正中神経麻痺)の治療法として重要な手技ではあるのですが、ひょっとすると自律神経のバランスを整えるメソッドになるかもしれない。私はひそかにそんな期待をしています。

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