「ほうろく灸」と自律神経

百会

滋賀県のお寺で「ほうろく灸」が行われている様子をニュースで見ました。弘法大師が広められた健康法だそうで、頭の上にほうろく(素焼きのお皿みたいなもの、本来豆を炒ったりする用途だけれど仏具やら茶道具でも使われるらしい)を乗せ、その上に火をつけたもぐさを乗せます。もぐさの熱がほうろくを通して頭のてっぺんに伝わってきます。そうやって10分間温めます。

頭のてっぺんには「百会=ひゃくえ」というツボがあります。名前の由来は100の経絡、エネルギーの通り道が交わるポイント、ということですから心身のエネルギーのターミナル駅みたいなものなのでしょう。正確な位置は、両耳の上端を結んだ線と、眉間をまっすぐ後ろに行く線の交差するところにあります。解剖学的には左右の頭頂骨のあいだ、矢状縫合上にあります。痔の特効穴として知られますが、頭痛や自律神経失調症にも効果があるといいます。

頭蓋骨を調整していると、どこかのポイントで患者さんはスイッチが切れたように眠りに落ちられます。経験則から言うと頭蓋骨の緊張しているところが緩むとそれをきっかけに「すとん」と眠られることが多いです。それで、頭のてっぺん、矢状縫合を調整した時に寝落ちされることが一番多いように思います。それだけ現代はストレス社会ということなのでしょうか。

「ほうろく灸」はあちらこちらのお寺で行われているようで、由来も効能も微妙に違っていたりしますが、ニュースでは「自律神経を整える」ということをちゃんと言っていました。暑気払いに行うということは夏バテ予防なわけで、これもやっぱり自律神経の調整でしょう。「頭の病を防ぐ」というのはもちろん脳血管障害の予防を行うおまじない的な意味合いもあるでしょうけれどメンタルケアの意味合いも含まれているのでしょうか。「煩悩を取り払う」というのもいかにも宗教的な意味合いのようですが案外こちらもメンタルケアかもしれません。さすがに、というかどういうわけか、というか「痔」は私が調べた限りではほうろく灸の効能には入っていませんでした。

百会に施灸をしようと思ったら、ほうろく灸のように座ってもらわないと難しいでしょう。素焼きの皿にもぐさを乗せてそれを頭上に両手で乗せるというのは理にかなったやり方です。ただ個人的に思うのですが、百会を温めると緊張が緩みます。前では読経やら説法やらが行われていて、それを聞きながら10分間リラックスするわけで、眠くなって火の付いたもぐさをほうろくごと落としたりする人はいないのでしょうか。

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