スマホ脳、ではなくスマホ病は手が痛む
スマホ病の正体はド・ケルバン病
ド・ケルバン病または狭窄性腱鞘炎と呼ばれる傷病があります。手首の親指側の骨のでっぱり(橈骨茎状突起)に痛みを生じます。親指を握って手首を曲げると痛みが増します。フィンケルスタインテストとかアイヒホッフテストと呼ばれる検査法です。
好発は中年女性。手の酷使が原因とされます。レジ打ちをしている方で時々親指から手首にサポーターをつけておられるのをご覧になったことがあるかもしれません。若い女性に発生するケースでは出産後が多く、赤ちゃんを抱っこするからと説明されます。ずっと昔、プロゴルファーの卵のキャディさんがこれで来院されたことがあります。バレンタインとかクリスマスとかのプレゼントにクラブの先っぽに着ける毛糸で編んだキャップをこしらえてると痛くなるねん、という話にいたく感心したのを記憶しています。そういうプレゼントをするとチップの額が全然違ったそうです。
ところが最近では若者にもこのド・ケルバン病がよく見られるといいます。原因はスマホ。特に片手の親指だけでスマホを操作しているとド・ケルバン病になりやすいと言われています。まあそうでしょうね、電車の中でスマホをいじっている若者を見るとみんな指を動かすのが早い早い。それは腱鞘炎にもなるわな、とオジイサンになりかけの私などは思います。今ではスマホ病とかスマホ腱鞘炎のほうが通りがいいようです。
ド・ケルバン病の手技による治療法
治療なのですが、まずは橈骨茎状突起にかかる筋肉の緊張を緩めて、伸縮性のテーピングを施行します。少し痛みが引いてきたら第1中手骨と大菱形骨の間に動きをつけて行きます。
重症の場合は(もしかすると同じ側の肘が痛かったり肩が凝ったりしているかもしれません)、鎖骨の下をさわってみます。たぶん鎖骨の一番内側(胸鎖関節)のあたりに強烈な圧痛があると思います。そうしたらその圧痛をモニターしながら頸を前屈、患側に側屈回旋させます。その肢位を取らせると胸鎖関節の圧痛はなくなりますのでそのまま2分ほどその態勢をとらせます。
上肢に症状があるときはたいてい要にあたる胸鎖関節に問題があります。一見ド・ケルバン病と無関係みたいだけれど治療に難渋する指の症状はここを調整すると楽になることが多いです。