テニス肘はテニスが原因ではないし、そもそも肘関節の障害でもない
「テニス肘」という傷病名は耳にされたことがあると思います。テニスのバックハンドを繰り返していると、肘の外側が痛み始めます。手首を反らせる筋肉は、ちょうど痛むあたり(上腕骨外側上顆)から手首、手の甲に向かって走行しています。バックハンドを繰り返していると外側上顆で炎症が起きます。それがテニス肘です。
そんなふうにテニスをする方にももちろん発症するのですが、テニス肘=外側上顆炎を好発するのは実は中年女性です。日常生活でもっともよく手を使うのは家庭の主婦でしょう。毎日毎日手を酷使しているうちに外側上顆にくっついている筋肉が炎症を起こし、年齢とともに「手を使うと肘が痛む」状態になります。テニス肘は俗称で、正式には「上腕骨外側上顆炎」といいます。テニス肘の名称を使って説明すると「私はテニスをしないからそれは診立て違いだ」とおっしゃる方がおられますのでもっぱら外側上顆炎の名称を使うようにしています。
もっとも一般的な症状は「肘が痛くてタオルが絞れない」です。それから「手に力が入らない」という訴えも多いです。これは手を使うと炎症のある外側上顆部に「ずきっ」とした痛みが走ります。それを恐れて手に力を入れることを躊躇するからです。
検査法は患者さんに手関節を反らせてもらい、術者はそれに抵抗をかけます。そうすると外側上顆に痛みが出ます。中指だけを反らせてもらってそれに抵抗を加えても同じように痛みが出ます。手を反らせる筋肉の中には中指の付け根にくっついているものもあるからです。
痛いのは確かに肘なのですが、肘関節そのものには障害がありません。いくら激痛があるときでも肘関節は全く痛みなく曲げ伸ばしができます。レントゲンを撮っても特に所見もありません。このあたりがなんでもかんでも「変形性関節炎」のせいにされてしまう膝関節と違うところです。
治療は、肘の圧痛点を緩めるのが基本ですけれど、手関節も調整します。「手を使いすぎて肘に痛みが出ている」のですから当然のことです。伸縮性のテープで筋力の補強をしたりすることもあります。炎症を起こしていますからマッサージはお勧めしないです。