「ギックリ腰」と「ギックリ膝」
筋肉は急激なショックを受けると緊張する
人間(だけではないのでしょうけれど)の筋肉は急激なショックを受けると緊張して固まります。例えば運転中に追突されて頸椎が曲げ伸ばしを強制されると「むち打ち損傷」になります。首周りの筋肉が緊張しますから、痛くて動かせなくなります。ほっておくと様々な自律神経症状が出現するのもご存じのとおりです。
腰に急激に無理な力がかかると、ギックリ腰になります。急に重いものを持ち上げようとした、とかいうケースだけではなく、ちょっと無理な姿勢をとって離れている所においてあるものを取ろうとして、そのままギックリ腰で動けなくなることもあります。この時も腰周りの筋肉が緊張しますが、それだけではなくお腹の筋肉や内転筋もぎっくり腰を起こした直後はカチカチに固くなります。
些細な外力でもギックリ腰は起きる
むち打ちやギックリ腰は必ずしも大きな力がかかって起きるとは限りません。しりもちをついただけでむち打ちを起こしたケースを診たことがあります。私の母親は掃除機をかけていて、部屋の境目の敷居にコードが引っ掛かったのをちょっと引っ張ったのがきっかけでギックリ腰になりました。ちょうど運よく?私は当時整形外科のリハビリ室で研修を始めたばかりでした。骨盤調整を習って、誰かに施術したくてたまらないところに母親のギックリ腰です。
「オカン、骨盤調整やったるわ。ぎっくり腰なんてすぐに治るで。」「いらん。ほっといたら治る。変なことして動かれへんようになったらどうすんの。」這って逃げようとするのを捕まえて骨盤を調整すると見事に治った記憶があります。翌日出勤して上司(というか師匠)に報告すると、莞爾として、「あんまり無茶はしないようにね」と言われました。
筋肉の緊張を解除すれば痛みは改善する
むち打ちにせよぎっくり腰にせよ、イレギュラーな力が患部にかかったときに防御反応として筋肉が緊張した状態です。そうやって活動を止めることで、事態がそれ以上悪化することを避けるためにそういう風にプログラムされているのでしょう。ですから痛みを改善するためには筋肉が緊張をやめてくれればいいわけで、そのためにセラピストは骨格を調整したり罹患筋をマッサージしたりあれこれ工夫を凝らします。
ちょっと以前に「ギックリ膝」を拝見しました。両膝をついて転倒してから膝の痛みが治らないとの事です。触診してみると膝のお皿(膝蓋骨と言います)が動いていません。年配の方でも膝の痛みを訴えるケースでは膝蓋骨の動きがよくないことが多いです。今回拝見した方は転倒のショックで膝周りの筋肉が緊張して膝蓋骨の動きが制限されていたのでしょう。この方はほとんど手を当てているだけ筋肉が緩んで膝蓋骨の動きは自動的にに回復しました。