歯列矯正後の不調(顎の骨も動いている)

歯列矯正

17歳まで歯列矯正の治療を受けてきて、ワイヤーを外した途端に体調不良が始まったという方を拝見したことがあります。胃腸障害がひどく、それまで皆勤賞だったものが学校も休みがちになったといいます。病院に行ったところストレスが原因ということで向精神薬を処方されました。20歳の時には顎関節症も発症しています。

歯科医院で歯の治療を受けたときに、下顎骨が左にズレていると指摘されました。体調不良の原因も含めて歯列矯正の影響を指摘されたといいます。それで、その歯科医院でマウスピースによる治療を受け始めました。一時的に体調が崩れるかも、ということをあらかじめ説明されてマウスピース治療を始めたのですけれど、不調は全身に及び、外出もできなくなり会社にも行けなくなりました。歯科医院ではなかなか思うような効果は出ないということで年単位の治療を考えて、と言われたそうです。どんどん体調が悪化するのを見て、「この治療は途中でやめる人もいますよ」とも言われたといいます。

ちょうどそのころに「顎の治療で辛いのなら頭蓋仙骨療法というのがあるよ」と知り合いの医師(!)に勧められ、あちこち検索して当院とのご縁ができました。初見時の症状としては「顎関節症、胃腸障害、過呼吸、下顎が左にズレている」という愁訴でした。こういう言い方は何ですけれど、しんどい思いをして継続したマウスピース治療は全く奏功しなかったことになります。おいでになったときは「電車に乗るのもやっと」という状態でした。

頭蓋骨の動きがよくなく、特に左の側頭骨の制限が強かったです。通常の頭蓋仙骨療法に加えて、上顎骨、下顎骨の解放を行いました。一見して鼻の下がしぼんだような感じでした。上顎骨は一対ですから矯正のワイヤーの影響でしょう。下顎骨はひとつの骨ですが、他の頭蓋骨の動きに合わせてちょうど尺取虫のようにたわみます。こちらも自由な動きが制限されていました。上顎骨、下顎骨とも奥歯をテコにして動きを誘導してあげるとゆるゆると動き始めました。施術後は機嫌よく帰宅できてその後数日間楽だったそうです。

一週間後、顔の感じも頭蓋骨の動きも随分改善していました。頭蓋骨のほかにちょっと骨盤を調整してその日は終わり。翌週はさらに機嫌のいい顔でおいでくださいました。胃の張る感じが出たり、飛蚊症がちょっと出たりしましたがその都度調整して結局6回の施術で卒業となりました。口も大きく開けられるようになり、顔がすっきりしたと友人にも言われるようになったそうです。仕事も始められるようになりました。患者さんはそのとき35歳。17歳から人生の半分を体調不良を抱えて生きてこられたわけで、それは辛かったことと思います。

歯科については全く門外漢なのですが、骨格調整の視点で考えると「形」よりも「動き」が確保できたことが症状の改善には寄与したのだと思います。歯科的な咬合のチェックを行えばおそらく何らかの問題は残存しているのでしょう。ただ、この患者さんのケースでは歯列矯正によって上顎骨、下顎骨の「動き」を止めてしまったことがさまざまな症状となって現れたのだと考えます。「動物は生きて動いているから動物、動かなくなればそれは死」、というのは私淑している臨床家の言葉なのですが、ほとんど認識されない口の中の骨の「動き」が妨げられただけでも全身に影響するということなのでしょう。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です