滲出性中耳炎と大人の登校拒否

耳の構造

滲出性中耳炎は子供の時に誰でもかかる病気でしょう。すんなり治ってしまう子もいますが再発を繰り返す子供もいます。そういう子は漫然と抗生剤を与えられ続けたりします。一度そういう子供さんの相談を受けて施術したことがあります。カイロプラクティックの手技で軽く耳を側方に引っ張るようにしてアジャストする手法があるのですがこれは痛がってダメでした。次に頭蓋仙骨療法を行ってみましたが効果はいま一つ。それで「耳管のストレッチ」を試してみることにしました。

術者は片側の示指で上顎骨をひっかけます。もう片一方の手で耳を把持して上顎骨と耳とを引っ張りっこします。すると耳管の癒着がはがれて中耳炎がよくなる、という手技です。何回か施術すると滲出性中耳炎が良くなったのです。私が勝手に言っているだけでなく、耳鼻科の医師の診断です。その年に米国人の講師から習ったばっかりの手技でしたが早速役に立ってくれました。

それからしばらくして、ちょっと不思議なご相談を受けました。会社員の方なのですけれど、出社するとなんだかしんどくなって帰りたくなるのだそうです。「登校拒否みたいなもんでしょうか」と聞かれたのですが別に会社に行くのが嫌とかではないと言います。頭蓋仙骨療法をご希望でしたので一通りの施術を行いました。

頭蓋骨は全部で23個の骨が組み合わさってできています。そのうち耳のあたりの骨を側頭骨と言います。耳を持って側頭骨を外側に引っ張る「テンポラル・イヤー・プル」という手技があります。これを行ってみると片側の耳だけが異様に固い。軽い力で耳を引っ張るとそれに続いて側頭骨が外に広がってくるのですが、そちら側の耳だけが「がちっ」と固まって動きません。どうやら奥のところで癒着があるようです。「こちら側の耳、子供の時に滲出性中耳炎でしたか?」と伺うと、「どっちだか忘れたけれどひどい中耳炎だった」とのお答えがありました。

それで「耳管のストレッチ」を行うと「みしみし」という感触とともに側頭骨が外に広がってきました。それを何回か続けると会社に行っても帰りたくなることはなくなりました。

人間は自分の周りの音から自分に必要な音だけを取捨選択して処理できるようになっています。雑踏の中で自分の名前を呼びかけられてもちゃんとわかるのはこの取捨選択のメカニズムが働いているからです。(カクテルパーティー効果と言います)ところが滲出性中耳炎で耳管が癒着してしまうと音の取捨選択ができなくなってしまいます。その結果、会社内での人の話し声、あらゆる物音がいっぺんに耳から入ってきて、それを脳はすべて処理しようとします。疲れて帰りたくなるのも当然でしょうね。

疲れやすいとか、頭痛があるとかいうときに側頭骨の癒着の痕跡を見つけることは時々あります。側頭骨に問題が起きるといろんな筋肉に影響が出ます。「原因不明」の原因は、案外中耳炎の名残かもしれませんよ。

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