指をしゃぶると血圧が下がる

EAT療法

上顎とのどの境目くらいのところに「口蓋骨」という骨があります。ごく薄い、小さなL字状の骨です。いびきがひどい人の口蓋骨を調整するといびきが止まります。鼻づまりの時もこの骨を調整します。一度、蓄膿症の手術後長いこと頭痛が続いている方の口蓋骨を調整したら、数十年にわたって悩み続けた頭痛が治ってしまったことがあります。花粉症やその他の鼻詰まりの時も、この骨を調整すると効果的です。

それからしばらくして東洋医学の雑誌を読んでいると、花粉症の鍼灸治療に「翼口蓋神経節」に鍼を打つやり方が載っていました。自律神経が整って、花粉症の症状が改善するという説明でした。私は鍼灸師ではありませんから鍼を打つことはできません。ただ、口蓋骨と解剖学的に近い位置ですから同じような作用機序だろうな、と見当は付きました。

人はストレスを感じたときに本能的に喉の奥を刺激します。緊張した時に「えへん」と咳ばらいをしますよね。繊細な人は緊張すると「からえづき」がでます。嘔気があって、「おえっ」となる。喉の奥を「きゅっ、きゅっ」と鳴らす癖のある人もいます。これらは癖というよりも緊張を和らげるための一種のチック症状かもしれません。やけ食いだって(過食と嘔吐を繰り返すパターンも)、同じ機序の行動なんだと思います。

そういう行動をとるのはストレスのある時に、喉のあたりに違和感を感じるからです。何か球形のものが喉につかえたような感じがあって、それを西洋では「ヒステリー球」、東洋医学では「梅核気」と呼びます。喉の違和感を和らげるために喉の奥を刺激したくなるということなら逆に喉の奥を刺激すれば自律神経やストレスの問題は改善しそうです。

新型コロナの「後遺症」に有効とされるEAT療法というのをご存知でしょうか。喉の奥の「Bスポット」と呼ばれる部位を薬品で刺激すして(ずいぶん痛いらしいですが)自律神経の調整を行う治療法です。こちらも多分、作用機序は同じもののように思います。

定期的に施術に伺っている心療内科で、血圧が乱高下する患者さんを拝見する機会がありました。ずっと血圧が上がったり下がったりを繰り返すのだそうです。ストレスが原因ではなさそうですが、自律神経の不調の見本みたいな症状です。それで口蓋骨を調整すると、すぐに血圧は安定しました。ご覧になっていた院長先生がこの手技を気に入って、いろいろ追試してくださいました。無効例ももちろんありますが高血圧には非常に切れ味がいいようで、院長先生ご自身もセルフケアで口蓋骨の調整を行っておられました。

ただ、口蓋骨調整のセルフケアを患者さんに勧めるには一つ隘路がありました。手技が結構難しいのです。慣れてしまえばどうということはないのですが、指を喉の奥に入れてしまうと嘔吐販社が起きて「おえっ」となってしまいがちです。患者さんが自分でやるときっとそうなるでしょうし、一回「おえっ」となった経験をすればもうセルフケアはしてくれないでしょう。

それで考え付いたのが「指しゃぶり」です。小さい子供は叱られたとき、退屈でつまらない時に自分の指をしゃぶります。それも必ず親指を。私の中学校の時の同級生で、指しゃぶりをやめられない子がいました。難しい問題を解く時とか先生にあてられて答えを考える時によく指をしゃぶっていました。彼がしゃぶっていたのもやっぱり親指でした。

どうしてほかの指をしゃぶらないのかというと、たぶん親指をしゃぶったときだけ、指の腹が上顎や口蓋骨に当たるからだと思います。つまり子供(と私の同級生)はストレスを感じたときにそれこそ本能的に口蓋骨を刺激して自分で自律神経を調整しているのだ、ということです。それなら大人のセルフケアにも応用してしまおうということで「指しゃぶり」を患者さんに勧めることになりました。私がうかがっているクリニックでは高血圧の患者さんにはセルフケアとして指しゃぶりが処方されています。

やり方は簡単というか普通に子供みたいに親指をしゃぶるだけです。上顎のちょっと奥に親指の腹を当てて「ちゅぱちゅぱ」と指を吸うと、うまい具合に親指の腹が口蓋骨に当たります。ちゅぱちゅぱする時に適度な力で口蓋骨を刺激できます。上顎の左と右と、二回に分けて行ってください。PTSDや後鼻漏にも効果があります。

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