顔の歪みは整体で治るか
顔の左右非対称を気にする方がいます。また、「顔を左右シンメトリーにします」というセラピストも存在します。結論から言うと、顔を文字通り左右対称にすることは不可能です。人間をはじめとする生物は、自転する球体であるところの地球上で生活しています。自転運動とバランスをとるためには身体を歪ませる必要があるわけで、顔だって例外ではありません。左右非対称が生き物の自然な姿なのです。
女優さんが写真撮影するときに顔の右側からしか写真を撮らせない、という話を聞いたことがあると思います。あれは顔が左右非対称であることを女優さん自身が知っているからですよね。右から見た時と左から見た時では顔の印象が変わることを、「顔がイノチ」の女優さんは良くご存じだということです。
ご自分の顔写真を使って、左右対称の顔を作ってみましょう。顔写真の真ん中に鏡を立てると、右半分だけ、左半分だけの顔を作ることができます。鏡に映っているのですから完全に左右対称の顔のはずです。でもそうやって作った顔って、どことなく不自然ですよね。自分の顔であって自分の顔でない、どこか不気味な感じすらします。
「それでも、」と思われた方もおられるかもしれません。テレビに出ている女優さんなんかでも、明らかに左右で非対称な顔の人がいるじゃないの、あれはどうなの?
実際問題として、一見して顔が左右非対称に見える方はおられます。うちの治療院においでの患者さんでもそういう方は時折おられます。左右非対称に見える原因のひとつは顔の筋肉の緊張です。当たり前の話ですが、顔も頭も筋肉が覆っています。どんな症状であっても、基本的には心身の緊張がベースにありますから、顔の筋肉も緊張します。筋肉が緊張すると、もともとあった顔の左右差が強調されます。普段であれば気にならない、気が付かないくらいの左右差でも筋緊張によってそれが強調されると目立ってしまうことがあります。
それから顎関節の歪みです。物を噛むときに働く咀嚼筋も様々な原因で緊張します。左右で緊張の程度は違いますから下顎骨が左右どちらかに歪んで見えます。特殊なケースとしては、抜歯などで上顎骨がゆがんでしまっうことがあります。この時は人中(鼻の下の溝)が左右非対称になって見えます。
それではこういう顔の左右非対称は治せるのか?「顔が左右で非対称になっているのを治してほしい」という患者さんを診たことがありませんからそのつもりで頭蓋骨矯正をやったこともありません。ただ、普通に頭蓋骨の緊張を調整して筋緊張を緩めていくと、特に意識しないでも顔の左右非対称は見た目、左右対称になっています。「術前術後の写真を撮っとくんやったなあ」といつも笑い話になります。ただし上顎骨に問題があるときはカントフックという特殊な手技を使います。顔周りの循環も改善しますからすっきりとした印象にもなります。手技療法で顔の歪みがなくなる、というのもそういう意味ではウソではないでしょう。
ただし、手技療法は美容整形ではありませんから「眼をもっと大きくして」とか「鼻を高くしてほしい」とかいうのは無理です。それから左右対称の顔というのは生物学的にあり得ない、ということは常に認識しておいてください。あくまでも程度とか印象の問題ですからお間違えのないように。「左右対称の顔」が目的になってしまうと悪徳業者の恰好のカモにされてしまいます。「顔を左右シンメトリーにする」というのは「心臓を身体の真ん中に移動させる」と言っているのと同じことと思ってくださいね。
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