骨盤矯正=仙腸関節の調整、ではない

骨盤の各骨

流行の?骨盤矯正ですがほとんど仙腸関節の調整の意味で使われています。確かに骨盤に問題があるときは仙腸関節の動きが制限されていることが多いです。仙腸関節を調整する手技はいろいろあります。頑丈な靭帯でおおわれている部位ですから強い力が必要なように思われますが、ごく軽い力で調整することも可能です。

動けないほどの腰痛患者さんが、仙腸関節の調整だけですっくと立ちあがる、ということももちろんあります。でもそうでないこともあります。腰痛の原因はひとつではありませんから当然のことで、仙腸関節の調整が奏功するのは仙腸関節に問題があって起きた腰痛という至極当たり前の話です。どうしてこんなことを書いているのかというと、「すべての腰痛の原因は仙腸関節のズレ」ということを主張するセラピスト(場合によっては医師も)は決して少なくないからです。

治療哲学、と言えばかっこいいですが時にそれは思考停止と同じことになってしまいます。

骨盤でいうならば仙腸関節のズレというのは腸骨(寛骨)が仙骨に対して変位しているということでしょう。でも、仙骨そのものがゆがむケースだってあるのです。そういう時にいくら腸骨を調整してみても効果は出ないと思います。仙骨の調整は患者さんに脚を動かしてもらい、術者がそれに抵抗をかける運動療法を使って行うことが多いです。仙骨上に圧痛が明らかにあるときはカウンターストレインという手技を使うこともあります。それで骨盤矯正をいくらやっても治らなかった腰痛が治ってしまいます。仙骨を調整するのも「骨盤矯正」ではあるのですが。

むち打ちが頸椎の調整で治らない時も仙骨の圧痛を調べます。頸椎から仙骨までつながっていますから頸椎の歪みが仙骨に波及したり、仙骨の歪みが頸椎に波及したりということがあるのでしょう。ちなみに仙骨と第5腰椎の間は「上仙(じょうせん)」という新穴(東洋医学の古典にはない、新しく発見された経穴)があって、むち打ちの特効穴とされます。

仙骨の調整は泌尿器科系統の症状のケアにも有効で、夜尿症とか頻尿の時は自律神経の調整のほかにこちらも緩めます。平素からご指導いただいているクリニックの院長先生から「原因不明の陰嚢痛」のご相談をいただいたときに仙骨のカウンターストレインをお伝えしたら、それできれいに治ってしまったそうです。

出産後に腰痛をおこしたときは恥骨結合のズレを疑います。触診すれば圧痛がありますから簡単に判断できるのですが、患者さんご自身で術前術後の圧痛を確認していただきます。こちらも調整法は運動療法を使います。直接セラピストが恥骨に触れることはありません。恥骨結合のズレは腰痛の原因にもなりますがもっと深刻なのが交接痛です。オステオパシー仲間の助産師さんは、妊娠時の腰痛と出産後の交接痛とが一番困る、と言っていました。

古い整体の本に、「口内炎は恥骨結合の調整で治る」という項目がありました。子供が口内炎を起こした時に試してみると確かに治ります。もっと追試がしたいのですがさすがに口内炎で整骨院にかかる方はおられません。

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