骨盤矯正は本当に効くのか

骨盤

最近あちこちの治療院で「骨盤矯正」という文字を見るようになりました。骨盤矯正は本当に効くのかについて書いてみようと思います。「骨盤矯正」「骨盤調整」、治療院によって呼び方は様々ですが基本的には同じものです。また一部の医師が行っているAKAという手法も(医師側は強固に否定しますが)同じようなものと理解してください。

骨盤は左右の寛骨と、真ん中の仙骨の3つの骨で構成されています。そうして寛骨と仙骨をつなぐ関節を「仙腸関節」と呼んでいます。解剖学では仙腸関節は不動関節といって動かないものとされてきました。ところが手技療法の世界ではこの仙腸関節にもわずかながら動きがあり、仙腸関節がずれることが腰痛その他の原因になると主張する人たちがずいぶん昔から存在しました。そうして仙腸関節を調整する技術がいろんな臨床家によって考案されてきました。

「仙腸関節がずれる」証左として、左右の脚長差が挙げられます。患者さんをうつぶせにして左右の脚の長さを比べてみると、左右で長さが違います。たいていの場合、右脚が短いです。骨盤矯正の手技を行うと両脚の長さは揃い、腰痛はうまくいけばその場で軽減します。ところが難儀なことに骨盤矯正を受けてものの数分経たないうちに脚長差は元の通りになってしまいます。骨盤矯正を繰り返し受けることで腰痛がそのまま治ってしまうことももちろんあるのですが、それでも左右の脚長差はなくなりません。

ではそれはなぜか。ちょっとその前に、下駄の足音を思い出してみてください。ゲゲゲの鬼太郎の足音は「カラン、コロン」ですよね。「カラン、カラン」でも「コロン、コロン」でもない。左右対称ではないということです。もちろんゲゲゲの鬼太郎が腰痛もち、ということはありませんよね。

腰痛には様々な原因があります。例えば内臓疾患が原因の腰痛というのも存在します。そういう場合はもちろん骨盤を調整しても全く効果はありません。それでも脚の長さを比べてみるとやっぱり長短差が存在します。

それから腰に全く症状のない患者さんはどうか。うちの治療院にはむち打ちとか顎関節症とか学習障害とか様々な症状の方がおいでになります。そういう患者さんでも脚長差を検査するのですが、やっぱり右脚が短いケースがほとんどです。腰に愁訴がなくても症状の強い人ほど左右の脚長差は顕著に現れます。

つまり、脚の長短差と仙腸関節(骨盤)のずれとは必ずしも関係ないということのようです。それでは腰痛患者さんはもとより腰痛のない人まで右脚が短いのはなぜか。それはもともと人のカラダは左右対称ではないからだと考えています。自転する球形の地球に住んでいる以上、すべての生き物は地球の自転運動とバランスをとって生活しなければなりません。人間をはじめとする生き物は地球の自転に合わせて身体を左右非対称に自在にゆがめながら生きているのが正常な姿ということになります。直立不動の姿勢でサーフィンができないのと同じ理屈です。

身体の病的傾斜とはだから左右非対称ということではなく身体を自在にゆがませることができない状態である、ということができるでしょうか。骨盤矯正は左右の脚長差をなくすことが目的ではなく、骨盤の可動性(私は可塑性だと思うのですが)を回復させるためのものだと思います。

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