頭蓋骨を「歪ませる」筋肉

側頭骨

当院の「売り」に頭蓋骨調整があります。ごくわずかな持続牽引で頭蓋骨の緊張を緩和する頭蓋仙骨療法(=クラニオセイクラル・セラピー)、比較的しっかりとした圧(痛みは全く感じません)をかけて頭蓋骨の位置関係を改善するストレイン・カウンターストレイン。両者を使い分けることで眼や耳、鼻などの症状や自律神経の問題、ふつうに脊椎や骨盤を調整しても改善しない腰痛などに対応することができ、ご好評をいただいています。頭蓋骨を調整するということは頭蓋骨は歪むものであるという前提になります。

それでは頭蓋骨が歪む原因にはどんなものがあるでしょうか。まずひとつ目が外力です。歯科治療の影響であったり顔や頭をどこかにぶつけた、などの外力によって頭蓋骨が歪んだケースです。忘れてはいけないのがマスクの影響です。コロナ禍以降、ずっと私たちはマスクをつけて生活してきました。言い換えればずっとマスクによる圧迫を私たちの顔面骨、特に頬骨は受け続けてきました。その影響は顎関節の機能や、メンタル面に及んでいます。これについては別の機会に触れたいと思います。ふたつ目がものをを噛むときの癖。例えば歯や顎が痛いなどの理由でヘンテコな咀嚼のしかたになった方は少なくありません。そこから頭蓋骨全体に歪みが波及していきます。

そうしてみっつめがストレスです。仕事であれ人間関係であれ心身がストレスを感じると交感神経が優位になります。いわゆる戦闘モードです。交感神経が優位になると筋肉は緊張します。筋肉は骨格にくっついていますから、筋肉が緊張することで骨が引っ張られて撓みます。骨盤を覆っている分厚い筋肉が緊張して、その影響で骨盤(生きているときの骨は可塑性がある)が撓むのがいわゆる「骨盤のズレ」です。

頭蓋骨にも同じことが起こります。側頭部、耳のある辺りに側頭筋という大きな筋肉がついています。頭蓋骨を覆う筋肉の中で一番大きくて強力です。この筋肉が緊張すると側頭骨が固定されてしまいます。左右の側頭骨の間に蝶形骨があります。脳脊髄液の産出と吸収を駆動力として蝶形骨が一定のリズムで動き、その動きが頭蓋各骨に波及し、さらに脊椎や骨盤にも動きを生じることで生命活動は維持されています。ブレス・オブ・ライフ、生命の息吹と呼ばれる動きです。ところが側頭筋が緊張して側頭骨が固定されると蝶形骨の動きも妨げられ、結果として脳脊髄液の循環がスムーズにいかなくなってしまいます。心身の不調は脳脊髄液の循環不全による、という頭蓋仙骨療法の考え方から見るとこれは非常によろしくありません。頭蓋骨は外力で歪むこともあるのでしょうけれど、周囲の筋肉の緊張で骨盤と同じように「撓む」ことでさまざまな症状を起こしているのかもしれないなと考えるようになってきました。

頭蓋仙骨療法では頭頂骨をストレッチしたり下顎骨を「減圧」といって足方向に牽引したりします。それぞれの手技の目的を大脳鎌のストレッチとか小脳テントのストレッチとかいう風に頭蓋内部へのアプローチとして説明していますけれど、単純に側頭筋のリリースなのかもしれないと考えています。側頭骨を固定している側頭筋をリリースすることで頭蓋骨の動きを回復させるというのがこれらの手技の作用機序なのかもしれません。

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