「腰痛に効く」オープンラベルプラセボ
オープンラベルプラセボの驚くべき効果
プラセボ(プラシーボ)という言葉はご存知かと思います。「これはあなたの病気によく効く薬です」と言って小麦粉を飲ませても一定数の人には効果がみられる、という話はどこかで聞かれたことがあるでしょう。プラセボの前提として、服用する人は自分が飲んだ薬が偽薬=プラセボであるかホンモノの薬であるかを知りません。たとえば新薬の開発ではそうやって実際にその薬が効いたのかどうかを判定します。
ところが、オープンラベルプラセボ(OLP)というのはあらかじめ「これは偽薬である」ということを説明したうえでプラセボを投与するやり方です。「そんなもの効くわけないだろう」と思われるかもしれませんが、実はこんな研究が最近行われました。
慢性腰痛患者へのはオープンラベルプラセボはなぜ効く?
米国の大学で行われた研究では、慢性の腰痛患者に通常の腰痛ケアに加えてオープンラベルプラセボ(OLP)として生理的食塩水を患部に注射し、通常のケアのみを行っている腰痛患者との経過の違いを調べました。
注射した医師も患者も、食塩水に腰痛を緩和する効果がないことは承知しているにもかかわらず、OLP投与群の方が腰痛が改善したという結果が出ました。OLP投与群には事前に、プラセボが内因性の疼痛緩和物質を産生して疼痛軽減効果をもたらす可能性があることを説明したビデオを視聴してもらいました。つまり、投与群は投与されたのがプラセボと知っていながら、それをきっかけに脳内麻薬が分泌されることで腰痛が改善するかもしれないという期待を持ち、その結果、現実に腰痛が改善されたのです。
日本での治療との比較
日本では「ヘルニア(変形性関節症でも可)があるから手術しないと治らない」という説明を受け、消炎鎮痛剤や物理療法が処方されることが一般的です。投与されるのは本物の消炎鎮痛剤ですが、OLPとあまり違わないようにも思えます。脳内麻薬の分泌は期待できないかもしれませんが、患者の期待や信念が治療効果に影響を与える可能性は無視できません。