足底腱膜炎と肩凝りの関係
足底腱膜炎という傷病をご存知でしょうか。足の裏、かかとの内側が「ズキン」と痛みます。結構強い痛みで歩行時に特に増悪します。「踵骨の内側底面に付着する足底腱膜に、繰り返す牽引力が加わって、その起始部(踵骨のことです)に腱膜炎や骨膜炎を生じて疼痛が起こる。」と整形外科のテキストに記載があります。いつの間にか痛み始めていつの間にか治っている感じです。
もっとも一度、電車に乗り遅れそうになって走っていたら足の裏で「ぶち」という何かがちぎれる感じがしてそれから踵に激痛が走った経験があります。足底腱膜「炎」ではなく足底腱膜の挫傷のような感じでした。「足底腱膜炎は外傷性でも発症する」とあっちこっちで話して回るのですがあんまり信じてもらえないのは私の不徳の致すところでしょう。
治療法としてはステロイドの注射とか足底版とかが一般的なところです。画像診断で踵骨に骨棘が認められることがあり、かつては手術で除去することがありましたが、骨棘と足底腱膜炎は無関係であることが現在ではわかっています。
手技療法で足底腱膜炎を治すこともできます。カウンターストレインという手技で圧痛点を処置するとだいたいそのまま治ってくれます。それであるとき、頭蓋仙骨療法の施術をしていて側頭骨に緊張が強い患者さんは、高頻度で反対側の足に足底腱膜炎が発症していることに気づきました。
足関節と反対側の頭蓋骨の間にシンクロニシティが存在するのはよく知られているところです。頭頂骨の調整をしていると動きの悪い反対側の足を患者さんが繰り返し底背屈させる、というのは日常よく見る光景です。逆に頭頂骨を緩めるために患者さんに足の底背屈運動をお願いすることもあります。側頭骨の場合も「耳引っぱり」として知られている「テンポラルイヤープル」で制限が強い側の反対に足底腱膜炎が生じやすいです。側頭骨の制限が強い患者さんに「足底腱膜炎でお困りではありませんか」と伺うと「なんでそんなことがわかるの」とびっくりされることもあります。
これは同業の先生に教わった話なんですけれど、ひどい肩こりの人は凝っている方の反対側の足裏、かかとの内側あたりに筋肉の緊張があります。ちょうど足底腱膜炎の起きる場所です。そこを緩めると何をやっても緩んでくれない肩こりが軽減します。こういうケースでは治療ポイントは東洋医学の経穴や反射療法(リフレクソロジー)の反射点と重複していることが多いのですけれど、かかとの内側はどちらとも重複しません。人間は立っているとき母指球、小指球、かかとの三点で体重を支えます。体重のかかり方がイレギュラーだと足裏の筋・腱に緊張が生じ、それが肩やら頭蓋骨にまで波及するのかもしれません。