大腿骨近位端部骨折後の肩の痛みについて
大腿骨近位端部骨折とは?
なんか学会発表みたいなタイトルですね。定期的に拝見している患者さんが大腿骨近位端部を骨折されました。股関節のところですね。かつてはここを骨折するとそのまま寝たきりになってしまうケースもあったのですが(日本で骨粗鬆症が必要以上に恐れられるのもこの骨折の存在を抜きに考えられません)、現在では観血療法(手術)が治療法の主流ですからこの骨折が原因で寝たきりになる人の数はずっと減りました。
手術とリハビリテーション
この患者さんも入院して手術的に骨折を整復して、リハビリテーションを行って回復されました。このあたりについては柔道整復師はほとんどかかわることはできません。法的には柔道整復師が大腿骨近位端部骨折の整復固定を行うことも後療法(リハビリテーション)を行うことも可能ではあります。でも現在そういう施術を行う柔道整復師は皆無です。予後が圧倒的によくない保存療法を選択する意味がないからです。
歩行と肩の痛みの関係
今回の患者さんに話を戻します。退院後初めて拝見した時の訴えが、「肩が痛い」でした。骨折した脚と反対側の肩が入院中から痛んだのだそうです。
歩行するときニンゲンは足を左右交互に出して前に進みます(当たり前ですが)。その時左右の上肢も交互に振ります。「腕を振って足を挙げてワン、ツー、ワン、ツー、休まないで歩け」と昔の唄にもあります。歩行時は普通、右足と左腕、左足と右腕が同時に前に出ます。
圧痛点の処置と歩行の改善
骨折した側の下肢の可動域は当然減少しますからその分歩幅は少なくなります。その分反対側の上肢の動きが制限されて痛みが出たのだろうな、と考えました。それで鎖骨の下と肩甲下筋とを触診してみると強烈な圧痛がありました。圧痛を処置してから診察台を降りて歩いてみてもらいました。私としては愁訴の「肩の痛み」が改善しているかどうかを伺いたかったのですが、患者さんの第一声は「足が軽い」でした。
「肩は…、どうですか?」と伺うと、「痛くない」とのこと。それより歩行の変化の方が患者さんには喜ばれたようです。歩幅が減少したことで制限された上肢の動きを改善させたことで、今度は歩行がしやすくなった。おそらくは補完代替医療の「補完」の部分というのはこういうことなのだろうと考えます。