急性腰痛の犯人は脳

それは本当に急性腰痛(ギックリ腰)なのか

「変な恰好で寝ていたらしくて起きてから腰が痛い」という患者さんがおいでになりました。急性腰痛、いわゆるギックリ腰は傷めるところがだいたい決まっています。触診すると圧痛があります。ところがこの患者さんは圧痛が見られません。こういう時はいくら腰をさわっても意味がありません。ちょっとだけレッドフラッグ(手技療法の適応外の症状)も気にしつつ、仰向けで頭蓋仙骨療法の施術をします。自律神経のバランスを調整してみようと思ったからです。

背側迷走神経系とは?

時々このブログでも記事にする「背側迷走神経系」というのをご記憶でしょうか。自律神経には活動モードを司る「交感神経」と活動を停止させる「副交感神経」とがあります。「副交感神経」はさらに二つに分けられます。一般にリラックスした時に優位になる「腹側迷走神経系」と絶体絶命のピンチの際に優位になる「背側迷走神経系」です。

後者が優位になると一切の活動をストップさせて危機的状況をやり過ごそうとします。言ってみれば「死んだふり」をするということですね。新型コロナ後遺症とか不登校も背側迷走神経系が優位になることで起きる、と考えています。

過労とギックリ腰の関係

仕事がむちゃくちゃ忙しいときにも背側迷走神経系は優位になります。そのまま仕事を続けているとヘタすれば過労死してしまう、脳はそんなことを心配?しているわけです。そういうケースでは往々にして「ギックリ腰」が起きます。腰が痛ければ仕事をやろうにも動けないですからね。出張の前日になってギックリ腰で動けない、何とかしてくれというご依頼は、ある程度経験を積んだ臨床家ならきっと経験しているはずです。

在宅勤務と腰痛

ウチにおいでの患者さんの腰痛に話を戻します。お話を伺うと在宅での仕事でパソコンをずっとご覧になっているとのこと。在宅勤務はオンオフの区切りがつきにくいです。実際には仕事とプライベートを切り替えておられても背側迷走神経系はそこまでわかってはくれません。かくして「過労死を防ぐ」ミッションのためにギックリ腰は発生したのでしょう。

通常の施術であれば緊張を緩めるのがセオリーですけれど、こういうケースでは心身を交感神経優位に誘導します。ふつうの腰痛治療が奏功しない腰痛にはこのパターンが多いと思います。もちろん炎症とかもありませんからNSAIDsも効いてはくれません。

今回のケースでは患者さんは「あれ、痛くないわ」と喜んでくださいました。巻いてこられた腰痛バンドも「暑いから」と言って手でもってお帰りになりました。オーバーワークにはくれぐれもお気をつけて。

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