ぎっくり腰で痛む場所は「腰」だけではない
ギックリ腰になられた経験はおありでしょうか。巷間言われるように腰に負担がかかる姿勢や作業をしているときだけでなく、実に些細なきっかけで腰が痛み始めることもあります。
ギックリ腰は腰椎が「ずれて」発症すると言われています。背骨の周辺を触診していくと「ぎえっ」と声が出るほど痛い箇所が見つかります。この骨が一応ギックリ腰の犯人ということになります。ずれた背骨を調整し、必要であればテーピングを貼付して、というのが一般的なギックリ腰の処置です。
「ギックリ腰で痛むのはどこ」と聞かれれば「そんなん腰に決まってるやん」と言われそうです。でもね、ギックリ腰の患者さんは実はあっちこっちが痛いのですよ。
例えば膝の裏。腰の悪い人はここにパチンコ玉くらいの筋硬結(筋肉の凝り)を触診できます。これを触診すると飛び上がるほど痛みます。それから内転筋(太腿の内側)とかお腹の筋肉とかもカンカンに緊張していて押圧すればえげつなく痛みます。
ギックリ腰でもむち打ちでも同じなのですが、イレギュラーな力が生体に加わったときに、脳は筋肉を緊張させて動きを止め、事態がそれ以上悪化するのを防ごうとします。パソコンの強制終了とか電車の自動急停車と同じ理屈です。なのでちゃんと勉強しているセラピストはギックリ腰の患者さんの腰だけでなく、身体の各部位の緊張を緩めようとします。
脳の緊急事態モードを解除するために頭蓋骨を調整したり、頸椎を調整したりすることもあります。
でも、大半のセラピストが見落としているギックリ腰のポイントがあります。
それは鎖骨下。
心身にストレスがあるときは鎖骨下のどこかに圧痛が現れます。そうしてこの圧痛を解除すると(カウンターストレインという手技を応用します)ストレスも消えていきます。PTSDの患者さんなんかはここを調整すると症状が楽になります。
ギックリ腰の患者さんの鎖骨下にも強い圧痛が出現します。ギックリ腰が改善していくにつれて圧痛は減退していきます。逆に鎖骨下の圧痛を処置することで腰の痛みの改善が促進されることも確認しています。ギックリ腰、と言っても痛むところはあっちこっちに存在します。