咀嚼は脳に効く

口

咀嚼というのは食物摂取のための運動ですけれど、それだけではありません。「宇宙食」というのをご存知でしょうか。宇宙飛行士の食事ははじめ、チューブに入ったものでした。そういえば小学生の頃の学習雑誌でそういう記事を読んで、駄菓子屋さんで買ったチューブ入りのチョコレートを「宇宙食や」と言って食べていたのを記憶します。私の年齢と育ちがばれてしまいそうですね。

チューブの形態にしたのは無重力状態ではそのほうが食べやすいと考えられたからでしょう。ところが咀嚼できないことで宇宙飛行士のストレスが溜まってイライラがひどくなったそうです。厳しいトレーニングを積んだ宇宙飛行士でもそうなってしまうのですね。それで宇宙食を咀嚼できる形態にしたところ、たちまちイライラはなくなったといいます。

咀嚼と脳機能との関係は動物実験などで良く知られていて、噛み応えのあるエサで育てたネズミのほうがそうでないネズミよりも学習能力が勝っている、といった話はお聞きになったことがあるやもしれません。

歩行運動によって下半身から上半身に血液が環流される仕組みから、「足は第2の心臓」と言われているのですが具体的には歩行によって筋肉が伸縮するとその動きによって血液が絞り出されるような仕組みになっているのです。もちろんこの働きは全身すべての骨格筋に存在しています。咀嚼筋は強力な筋肉ですから、咀嚼することでたくさんの血液が循環します。例えばガムを噛むことで集中力がつく、とも言われています。もっとも私は講師業をしているとき、授業中にガムを噛んでいる学生は嫌いでしたが。

閑話休題。咀嚼と脳血流の増加の関係は咀嚼筋の働きで説明できると思っていたのですがどうやらそれだけではないようです。宮城三郎先生という歯科医師が書かれた「口は気の病をなぜ治すのか」という書籍によると、「顎関節には口を開くと頭蓋骨内の海綿静脈洞から静脈血を翼突筋静脈層に流れ込ませるポンプ作用がある。」と記されています。この顎のポンプが人間の健康には重要な働きをしているといいます。

例えばあくび。これは脳が酸素を欲しているときに出るものと言われています。ただそれだけではなくて、大きなあくびをすることで咀嚼筋を緩め全身をリラックスさせる働きがあるそうです。あくびをすると涙が出ますけれど、これはあくびでストレッチされた筋肉によって涙腺から涙が絞り出されるから、と説明されます。でも涙を出すことがカタルシスになることは皆さんご存知ですよね。頭蓋仙骨療法の施術中に涙を流される方は珍しくありませんが、これは感情が解放されて患者さんが緊張を手放したサインと考えられます。それと同じことがあくびをすることでアタマの中で起きている、ということです。

笑うと免疫が上がるとか病気が治ると言われます。がん患者さんに新喜劇の舞台を見せるという話もどこかで読んだことがあります。これも大きな口を開けることで顎のポンプが働くことによるそうです。ただ書名を見てもわかるように、宮城先生は顎のポンプで循環するものは血液だけでなく「気」であるというお考えです。

これには賛否あるかもしれませんが、私は賛成します。だってあくびって伝染するじゃないですか。あれは「気」というエネルギーの働きだと考えればすべて合点がいきます。気功師が「気」を放っているときには脳波に変化が起きるといいますけれど、あくびが伝染するときの脳波の変化とか見てみたいです。

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