アデノイド顔貌はマスクが原因?
アデノイド顔貌とはどんなものか
アデノイド顔貌というのをご存知でしょうか。口元が全体的に突出している。あご周りがたるんで二重顎になっている。下顎が後退して、顎と頸の境目がわかりにくい、そういう顔です。芸能人やスポーツ選手にもおられますよね。原因はもちろんアデノイド肥大です。アデノイド肥大は成長期でおさまりますけれど、そのままアデノイド顔貌が残って人はたぶんあなたの周りにも何人もおられると思います。
アデノイド顔貌はマスク生活が原因か?
最近、歯科の先生がマスクとアデノイド顔貌の関係を指摘されています。コロナ禍で受診の期間が開いていた患者さんを診察してみてビックリ、ということがあるのだそうです。アデノイド顔貌になる原因として「マスクをかけていると鼻呼吸がしにくくて口呼吸になりがちだから」という説明がされます。口呼吸することで口周りの筋肉(口輪筋)が緩み、いわゆる「お口ポカン」の状態になる。口周りの筋肉が弱くなることで下顎が引っ込んだ感じになり、前歯が出っ張って見える。そのため鼻の下が間延びした印象になる。というのが歯科の先生の指摘されるマスクでアデノイド顔貌になるメカニズムです。
マスクをしていると成人でもアデノイド顔貌になる、という話をどこかで眼にしたことがあります。日本人は欧米人に比べて鼻が低いですし、食生活の影響で(やわらかい食品ばかり食べている)下顎骨の発達が良くない人が多いですから、そういう事もあるかもしれません。ただ、成人の場合は口呼吸だけがマスクによるアデノイド顔貌の原因ではないように思います。
アデノイド顔貌の原因は確かにマスク生活だけれど
試しにマスクをつけてみてください。マスクの生地は顔のどこに当たっていますか?おそらくは鼻と、左右の頬骨とそれから下顎の先端(頤:オトガイ)だと思います。マスクはゴムで耳にかけますから、顔の4点に日常的に圧迫力がかかっているということになります。
上顎骨は左右一対の骨です。頭蓋骨は脳の呼吸に合わせてわずかに動いていますから、左右の上顎骨にも動きがあります。隣にある頬骨がマスクで圧迫されると上顎骨は圧迫されて動くことができなくなります。さらに圧迫が加わり続けると上顎の幅がだんだん狭くなってきます。実際、頬骨のマスクによる圧迫はカラダのいろんなところに影響を及ぼしていると思います。今年(2023年)の花粉症が例年になくえげつないのも花粉の飛散量だけではなく頬骨が圧迫されていることが原因していると考えています。
マスクによる頭蓋骨の変形
下顎(頤)はマスクによって前方から後方に圧迫されていますから、後ろに引っ込むしかありません。アデノイド顔貌であるかどうかは、横から顔を見て「鼻の頭と頤を結んだ線より唇が前方に出ているかどうか」で判断されます。鼻と頤はマスクのゴムによって後方へ圧迫されていて、上顎は左右から頬骨に圧迫されて狭くなってきます。マスクのゴムの張力は定型的なアデノイド顔貌ができる方向に口周りの骨を圧迫していることになります。
口が開いたまま、なのはマスクによる口呼吸が原因なのではなくて、むしろマスクの圧迫による骨の変形の結果なのかもしれないと考えています。いずれにせよ口呼吸はよろしくないことは間違いありません。口呼吸をしていると脳への酸素供給量が鼻呼吸に比べて減少する、とも言われています。
成人がアデノイド顔貌で一番気にされるのは外観の問題なのだそうです。顎がたるんで見えるのは確かに美容上よろしくありませんよね。マスクをしていない時は自分で頬骨をつまんだり、意識して固いものを噛むようにするといいと思います。