ジャパニーズ・パラドックス(ニッポンの骨粗鬆症)

高齢者の骨折

骨粗鬆症という名称はご存知のことと思います。「年を取ると骨折しやすくなる」「骨がスカスカになる」「寝たきりの原因になる」…。どれもウソではありません。年齢を重ねると骨量が減少して骨折しやすくなります。高齢者に多い骨折として、①脊椎圧迫骨折、②上腕骨近位端骨折(腕の付け根)、③橈骨遠位端骨折(手首)、④大腿骨頚部骨折が挙げられます。いずれも骨粗鬆症がベースに存在する骨折です。

そうして大腿骨頚部骨折(折れる部位によって大腿骨転子部骨折とも言われる)が寝たきりの原因となっていた時代もありました。なぜかと言えば骨癒合がしにくく保存的に(ギプス固定などで)治療すると長期臥床の必要があったからです。ところが現在では大腿骨頚部骨折はすべて観血的に治療されます。早くからリハビリで歩行できるようになったので、大腿骨頚部骨折による寝たきりが多発した時代は過去のものになっています。

骨粗鬆症の原因はカルシウム不足、乳製品やら牛乳由来の健康食品を取りましょうという広告は新聞を見れば数日に一回は必ず目にします。ところが不思議な話があります。欧米人の牛乳摂取量は日本人の比ではありません。にもかかわらず、骨折の症例数は欧米人のほうが圧倒的に多いのです。大腿骨頚部骨折に至っては、欧米の発生数は日本に2倍にもなるそうです。

カルシウムの摂取量が多いはずの欧米人が日本人より骨折しやすい、このことを称して「ジャパニーズ・パラドックス」と言います。実は日本でもライフスタイルと骨折の関係について調査されたことがあります。この調査でも牛乳の摂取量と骨折の発生頻度には相関関係は見られなかったそうです。

調査によれば毎日散歩や日光浴をする人は骨折しにくく、逆に骨折しやすい人はしょっちゅう転倒していたということもわかっています。ライフスタイルでいうと、日本茶を飲むとか畳生活とかも骨折しにくい要因であるそうです。

せっかく骨折しにくいライフスタイルであるにもかかわらず「骨粗鬆症になって骨折して寝たきりになる」のを恐れるあまり、予防効果のない牛乳由来の食品を摂りつづけるという状況は、はて、どこかで見覚えがあると思ってみたら新型コロナとワクチンに対する日本の人びとの態度と瓜二つです。ちょっとフシギな国民性ですね。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です