患者さんの画像診断で「見える」こと

頸椎

私が整骨院を開業したころは、シャウカステンといってレントゲン写真を見るための機器を置いている同業者がたくさんいました。当時の整骨院には骨折や脱臼の患者さんがおいでになっていました。整骨院の「先生」であるところの柔道整復師は医師の同意がないと骨折脱臼の患部に施術ができません。それで応急手当のあと患者さんに医療機関でレントゲン写真を撮ってもらってきて、それをシャウカステンで見ながら患者さんに説明をしていたということです。

当時の患者さんは付き合いが良かったのか、整骨院と医療機関との間を往復してレントゲン写真を携えてももう一度整骨院まで戻ってきてくださったということです。

私は柔道整復師ではあるのですが、無麻酔下で骨折の徒手整復を受けることに患者さんにどのようなメリットがあるのかがいまだに理解できていません。もちろん整骨院にシャウカステンを置いたこともありません。

柔道整復師の間でカイロプラクティックが流行した時も、患者さんに医療機関でレントゲン写真を撮ってきてもらうよう指示していた柔道整復師がいました。カイロプラクティックはむやみに骨をバリバリ鳴らすのではありません。患者さんの全脊椎、後頭骨から仙骨までのレントゲン写真を分析して矯正する部位を特定したうえで調整を行うのが正式な施術法です。カイロプラクティックがレントゲンの技術とともに発展してきたことはもっと知られてもいいと思います。

レントゲン写真の分析というのもなかなか大変らしく、カイロプラクティックで使用するのは立位、すなわち体重がかかった状態での全脊椎の写真を必要とします。そんなものを撮影してくれる医療機関がそうそうあるはずもなく、また柔道整復師のレントゲン写真のオーダーに応じてくださる医療機関、医師を探すのもなかなか大変でしょう。そんなわけで日本のカイロプラクティックは前提条件であるレントゲン写真の分析を行うことなく矯正手技を行っているところがかなり多い、というか大半であると思います。

レントゲン分析を行う代わりに徒手検査で調整部位を特定する技術もあります。これはかなりの高等技術ですが、残念なことに脊椎そのものの病変を判断することができません。例えば転移癌などがあったときに医師による適切な治療を受けるのを遅らせるのはもちろんのこと、病的骨折を起こす可能性だってあるわけです。

私が患者さんに、まず医療機関での診察をお勧めするのもそのためです。病院で診ていただいたほうがいい患者さんと、補完医療の患者さんは峻別されるべきです。除外診断がなされていることは、患者さんと術者、どちらにとっても安心できる材料であると思います。病院を非難するときの決まり文句、「レントゲン撮ってもらったけれど、骨に異常はありませんと言われて湿布を出してもらっただけだった。」というのは実はものすごく大切なことなのだ、ということを記憶しておいてください。

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