「小顔矯正」で顔は小さくなるか

顔への施術

手技療法で顔が左右対称になるか、という話の続きです。世間には「小顔矯正」という施術が流行しています。エステ系のサロンだけではなく、柔道整復師などの有資格者の施術所でも「小顔矯正」がメニューにあったりします。実際に顔が小さくなるかどうかは、それこそモノサシで測ってみればいいわけで、数字で証明できないのであればそれは「小顔」でも「矯正」でもないことになります。

「整顔」でも「小顔矯正」でもそれから私が施術している「頭蓋仙骨療法」でも頭蓋骨がずれたり動いたりすることが前提になっています。ご存知の方も多いでしょうが、頭蓋骨は1個のヘルメットのような骨ではなく板状の骨が23個組み合わさってできています。このつなぎ目も関節の一種で「縫合」という名称で呼ばれています。現代医学では骨盤の仙腸関節と同様、動かない「不動関節」とされています。ですから頭蓋骨の縫合が動くという発想は医学的にも否定されがちですし、消費者庁が「小顔矯正」をうたっているサロンに対して景品表示法に抵触するとして行政処分を科した、というニュースも以前ありました。

おそらく頭蓋骨のケアがエステのメニューに登場したのは20年位前からです。その当時、頭蓋骨矯正をいち早くメニューに取り入れたサロンがこんなことを言っています。「頭蓋骨にはつなぎ目がありますが、ほとんどの人は普通に暮らしていれば、これが毎日0.1ミリぐらいずつ、ずれていくんです。それにつれて顔にもゆがみが生じ、左右対称ではなくなっていくのです。(フライデー2001年6月1日号)」こういうメチャメチャな話が堂々と雑誌に掲載されるほど、頭蓋骨矯正というのは当時斬新に映ったのでしょうね。冷静に考えてみれば1日に0.1ミリなら1か月で3センチ顔がずれることになるわけで、1年もたてばみんな顔面崩壊してまいますよ。

小顔にしてもおんなじことです。縫合部で頭蓋骨が動くストロークは、それこそ0.1ミリとかもっと小さいでしょう。それを押しても引っ張っても有意なサイズの減少が起きるとは考えられないですよね。

ただし、私は頭蓋骨に対する手技療法がインチキだとか無意味だと言っているのではありません。頭蓋骨を調整しているとそこそこの正確さで顔面の打撲、抜歯、中耳炎などの既往を指摘することができます。(全然見当はずれのこともありますが)何よりも頭蓋骨を調整することで様々な症状が改善していくことは疑いようのない事実です。頭蓋骨が「本当に」動いているのかどうかは頭蓋オステオパシーの作用機序のモデルであって、ひょっとしたら将来覆るのかもしれません。もしそうであったとしても、頭蓋オステオパシーの治療メソッドとしての価値は特に変わらないと思います。骨盤バンドという商品があります。縫合と同じく医学的には不動関節とされる仙腸関節の「ずれ」を矯正する効能をうたっています。それがずっと販売されているのはバンドを装着することで腰痛が改善するという事実があるからでしょう。頭蓋オステオパシーの施術も同じことだと思います。

それで、先日のことなのですけれど「整顔」、「小顔」を意識して頭蓋オステオパシーの施術をする機会がありました。患者さんではなく医療機器メーカーさんとのミーティングの時に、「どんなふうに顔の印象が変わるか」ということで女性社員さんお二人に施術してみました。そうしたらお二人とも、「顔がすっきりした」と言って喜んでくださいました。確かに眼はパッチリして、ほうれい線は薄くなります。別にむくんではおらるとは思わなかったのですが、顔立ちがシャープになった感じ。施術前後の写真を見比べても確かに顔の印象は変わりました。ついでに言えば顎が片方に寄っていたのもまっすぐに見えるようにはなりました。でも、これはあくまでも「印象」であって数値化できるものではありません。

身もふたもない言い方をすれば飲みすぎで顔がむくんだり、お腹をこわしてげっそりした顔になったり、というのと本質的には変わらないのでしょう。頭蓋骨への施術で顔の外見が変化するのは、施術によって頭蓋を覆う軟部組織の緊張が緩んだり、組織下のリンパの流れや血行が改善したことによるのだと思います。「小顔矯正」もそういう意味では有効だと思います。頭蓋骨をわざわざ持ち出してこなくてもふつうのエステの施術とそう変わらないようにも思いますが。

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