転倒防止の白い糸(足首とバランス調整)

距骨

開業前に少しの間だけ整形外科でリハビリ職員をしていました。来院される方の大半が高齢のご婦人で、愁訴はたいてい腰か膝の痛みでした。低周波の導子を巻いてホットパックを乗せて、というのが当時の物理療法の定番でした。

それで、そのうちかなりの割合のご婦人が足首に白い糸を巻いておられました。「これ、何ですか?」と伺うと、「転ばないまじない」と教えてくださいました。なんでも弘法大師さまのご縁日に足首に白い糸を巻いておくと歩いていて転ばないのだそうです。

お大師様が伝えてくださった、という話でしたがいつごろから始まった風習なのかはわかりません。高齢者が転倒すると、骨折の危険性があります。特に脚の付け根(大腿骨頚部・転子部)を骨折するとかつてはそのまま寝たきりになることもありましたから「転倒防止」は非常に重要だったことは間違いありません。

それから整骨院を開業してしばらくは白い糸のことは忘れていました。同じ大阪市で開業したのですけれど、私が開業した地域では足首に白い糸を巻くおまじないはほとんど見られなかったからです。当時私は骨盤調整に凝っていて、毎日毎日患者さんの骨盤ばっかり触っていました。そんなある時、患者さんの足首に細いテープを貼付すると骨盤がどうなるのかな、ということをふと思いつきました。それで下肢に長短差のある患者さんの足首にテーピングをしてみました。すると両脚の長さがきれいに揃うのですよ。

「脚の長短差」は骨盤に歪みがあるときの指標とされます。もうちょっと細かく説明すると右脚が左より短い時、右側の骨盤が後下方に転位しているか(PI腸骨)左側の骨盤が前上方に転位しているか、の2パターンがあるとされます。今度は長短差に責任のある側の足首だけにテープを貼付してみるとやっぱり脚の長短差は解消されるのです。

残念ながらそれだけで症状が治ってしまうことはありませんが、今でも坐骨神経痛とかひざ痛の患者さんに補助療法として足首にテープを貼付することがあります。左右の骨盤のバランスが取れた状態ですからたぶん転倒する確率も減ってはいると思います。

カイロプラクティックのセミナーに参加すると足首の調整でカラダのバランスをとる手法は時々見かけます。多くは足首の距骨という骨を調整の目標にしています。

今検索してみると、足首に白い糸を巻くおまじないはあちらこちらで行われているようです。お大師様がお伝えくださったのかどうかは定かでありませんが、各地に「弘法の湧き水」みたいのが存在するのと同じような感じでしょうか。糸を巻く日にちは旧暦の朔日だったり様々ですが、「白い糸」という条件は全国どこでも同じです。「白」にも何か意味があるのかもしれないなとは少し思っています。

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