頭蓋仙骨療法は怪しいか

怪しいパワー

オステオパシー整体の技術のひとつに「頭蓋仙骨療法」があります。頭痛や顎関節症、学習障害、自律神経の問題、ストレスの軽減などいろいろな症状に有効です。ウチの治療院でもこの手技をメインに使っているのですが、時折「頭蓋仙骨療法は怪しい、胡散臭い」という声を耳にします。施術中はセラピストは患者さんの頭に手を当ててずっと動きません。揉んだり押したりしないで手を当てているだけというのは(実はいろいろやっているのですけれど見た目はそうでしょうね)確かにアヤシイ光景かもしれませんね。

この手の批判に対する定番の反論があります。「海外では普通に行われている治療法である」「オステオパシーは欧米では医療として認められている」

それは本当の話ではあります。でも、欧米で正式な医療として行われていることと、日本でいろんな資格のセラピストが頭蓋仙骨療法やそのほかのオステオパシー施術を行っていることの間には何の関係もありません。だからこれらの理由をもってニッポンの頭蓋仙骨療法が怪しくないという根拠にはなりません。

ただ、柔道整復師に関して言えば正式な教育課程にある「リハビリテーション医学」の教科書に、カウンターストレインやマッスルエナジーテクニックと並んで「クラニオセイクラル・セラピー(頭蓋仙骨療法を横文字で表現するとこうなる)」の記載が存在したのは事実です。もっとも「クラニオ」に関する記載はいつの間にか姿を消しましたが。

頭蓋仙骨療法はさまざまな団体や個人によって紹介、実践されており、その中には「カルト」と呼ばれる集団もあるのかもしれません。それからセラピストの中に自分の「パワー」みたいなものを喧伝するタイプの人が多いのも、一般の方が頭蓋仙骨療法に対して胡散臭さを感じる要因であるのかもしれません。これについては頭蓋仙骨療法が開発された当時からそのような態度をとる施術家が存在していたことが指摘されています。

「…頭蓋仙骨の概念は、それがどの様に働き、なぜうまくいくかについて十分に理解されることなく、少数の開業医によって何世代にもわたって行われてきた。これらの少数の人々によって行われたときは効果的であったが、その適用と結果がとても神秘的にみえたので、信仰による治療として人々に知られる様になった。実際、一部の開業医は自分の手を通して天与の治癒能力を直接注いでいると信じていた。(『頭蓋仙骨治療』 ジョン・E・アプレジャー ジョン・D・ブレデヴォーグ共著)」

実際に体験していただくとわかるのですが、頭蓋仙骨療法を受けているときの感覚には一種独特の心地よさがあります。それを「神秘的」と感じる人も当然おられるでしょう。私が伺った施術のご感想にも「瞑想の時の感覚と似ている」というお声が多いというのは記事にしたことがあります。それを逆に利用する怪しい団体や人物の存在については否定はできないかもしれません。そうでなくても「センセイすごい」と言ってもらって勘違いするセラピストはきっと少なくないでしょう。そうしてそういうセラピストは、自分の「パワー」を喧伝し始めどんどん自分から怪しくなっていってしまいます。

つまり頭蓋仙骨療法の他に類を見ない心地よさが、「怪しさ」を生み出す理由になるという何とも皮肉な話になってしまっているのです。

頭蓋仙骨療法は「押せば引っ込む、引けば出っ張る」物理的な治療法です。もちろん受診された方に起きるさまざまな体験は神秘的ではありますが、それは「生命の神秘」に起因するものであってセラピストの能力に起因するものではありません。そこがわかっていないセラピストから頭蓋仙骨療法を受けることは避けたほうが賢明だと私は考えます。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です