顎関節症の治療、といって下顎しか調整しないのはナンセンス

顎の筋肉 咬筋

私たちはマスクを年単位でずっとつけ続ける生活をしていました。それでコロナが防げたのかどうかは知りません。ただ、マスクによる口周りの圧迫の影響はそろそろ出始めています。

マスクのゴムによって頬から顎にかけてはすっと持続的に圧迫されてきました。顔面を含めて頭蓋骨は板状の骨が組み合わさって構成されています。骨どうしのつなぎ目は「縫合」と言って関節の一種です。脳の呼吸に合わせて頭蓋骨はごくわずかに膨張したり収縮したりするのですが、その際の動きは頭蓋骨の縫合で起きています。

関節は動かないように固定しておくと、そのまま固まってしまいます。手足を骨折された方はご存知だと思いますが、ギプス固定を外した後、固定していた手や足は動かせなくなっています。リハビリテーションで動かなくなった手足を動かす訓練をしたり、日常生活で使ったりすることで徐々に可動域がついてきます。

頭蓋骨の縫合も関節ですからマスクでずっと圧迫されていると動きが悪くなります。本来であれば脳の呼吸に合わせて頭蓋全体が動くはずが、動きの良くない部分があることで脳呼吸がうまくいかなくなります。サイズの合わないきついシャツを着ていると胸郭の動きが妨げられて息苦しいですが、それと同じようなことが頭蓋でも起きているということです。結果として自律神経のバランスがうまく取れなくなって、さまざまな症状の原因となります。今年の花粉症はえぐい、とあちこちでいわれていますが、単に花粉の飛散量の問題ではないと思います。

頭蓋骨で一番大きな動きをするのは顎関節です。そういわれてみれば口を開けにくいな、と感じられる方もおられるでしょう。鏡でご自分の顔を眺めてみると顎が左右どちらかに傾いているのに気が付かれるかもしれません。食事をするときに顎がだるくなるとか内頬を噛んでしまうとかいう事が起きているのに気が付いた方もおられるでしょう。

歯を「イーッ」と食いしばったときに頬に硬く触れる筋肉が「咬筋」です。軽く指で触ってみると、顎に不調のある方は痛みがあります。マスクを外して生活するようになって顎の歪みが気になる方も咬筋に痛みがあるかもしれません。

顎関節に不調があるときに、歯科医院を受診される方が増えているそうです。ポストコロナでマスクのない生活が始まればもっと増えるでしょう。整骨院や整体院などの補完医療に通っておられる方ならセラピストに相談されるかもしれませんね。

そういう方のお話を伺ったり「通院したけれど良くならない」というご相談を受けたりしたときに不思議に感じるのですが、どういうわけかほとんどの臨床家が顎関節の症状のケアの際に下顎骨しか触りません。上顎骨は左右一対ですからマスクの圧迫を受け続けていれば少なからずその影響を受けるでしょう。具体的には圧迫された頬骨が上顎骨を歪めるということです。

下顎骨の歪みは下顎骨単独ではなく、歪んだ上顎骨に「付き合って」変位しているケースは結構見受けられます。そういう時に下顎骨だけ調整しても意味がなかろうと思うのですがいかがでしょうか。

上顎骨に歪みがあるかどうか、自分で確認できます。鼻翼のちょっと外側に骨がくぼんだ所があります。ここを左右軽く押してみて左右で感じが異なっていたり痛みがあれば上顎骨が歪んでいる可能性があります。鼻の通りが悪い時も上顎骨に歪みがあるかもしれません。

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