心のケアは身体のケア

なんとなく不調

北杜夫の「楡家の人々」という小説があります。前半の主人公、楡基一郎はドイツ帰りの精神科医です。病院には「マッサージ主任」という職員がいて、基一郎がドイツから持ち帰ったマッサージの機械で患者さんの頸を解していきます。この病院の職員はそれぞれ個性的なのですけれど、普通の精神科とはちょっと変わった治療ということで、「マッサージ主任」のエピソードが描かれたのでしょう。

高校生の時に初めてこの小説を読んだ時には全然気にせずに読んでいたのですけれど、セラピストになって、メンタルケアに関心を持つようになるとちょっと見方が変わってきます。心療内科で施術をさせてもらっていて思ったのですが、ストレス性の疾病であっても患者さんの愁訴のかなりの割合は身体の不調なのですよね。不眠、頭痛、便秘、下痢、倦怠感などなど。この小説の舞台は戦前戦後の日本ですから、ドクトル楡基一郎にはずいぶん先見の明があったことになります。

逆に、主訴が身体の不調であっても、メンタルの影響が反映されていることは珍しくないというより、ごく一般的なことです。大事なプレゼンの前日に声が出なくなるとか、出張の直前になって腰痛になるとか、入試シーズンに入ったとたんに体調を崩して熱が出るとかいう事は、誰しも経験していることではないでしょうか。ストレス社会と言われて久しいですが、コロナ禍に天変地異、不安定な社会情勢、不景気と「ぼんやりとした不安」に常にさらされているとそれは当然体の不調となって現れます。体調の不良がストレスになってさらに症状を増悪させる悪循環になっているのが今日この頃の世相なのでしょう。

もちろん私はカウンセリングの真似がやりたいわけではありません。きちんとした知識、技能を持たないものがカウンセリングを行うことは心理職の方がいきなり骨盤調整を行うくらい無謀なことだと思っています。

以前にも記事にしたケースですが、ぎっくり腰でおいでの患者さんの鎖骨下を触診してみると強い圧痛があります。心身にストレスがあるときはどういうわけかここに圧痛が出現して、ストレスが解放されると圧痛は消失します。逆にこの圧痛を意図的に解放すると心身のストレスは軽減して、結果的に症状は改善していきます。

何かストレスを抱えていて、それがぎっくり腰の誘因になったときでも圧痛は出ますし、ぎっくり腰のせいでストレスを感じたならば(仕事ができない、など)やっぱり圧痛は出ます。ストレスと症状、どっちが卵でも鶏でも鎖骨下に圧痛は出現して、それを解除すれば不調は改善します。仮に不調がメンタル面のものであってもやることは同じです。

もちろんオステオパシー整体が精神科や心療内科の診療の代わりにはなりません。あくまでも補助的な療法としてお考え下さい。ドイツ製のマッサージ機よりは効くと思いますけど、きっと。

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