睡眠発作またはナルコレプシー

第4脳室圧縮

睡眠発作という病名を初めて聞いたのはオステオパシーを教わった先生が書かれた書籍でした。過眠症のひとつで、通常では眠ってはいけない重要な場面でも耐えられないほどの強い眠気に襲われたり眠ってしまったりということが起きます。5分から10分で眼は覚めるが、その間のことは記憶していないといったものです。正確には病名がナルコレプシー、症状として睡眠発作が出現します。遺伝子とか脳脊髄液の組成とか原因には諸説あり、発症のメカニズムについては研究中ということで、実際のところよくわからない病気なのでしょう。

師匠は頭蓋骨の調整から始め、環椎と後頭骨の間、第5腰椎と仙骨の間の緊張を緩めることと、全身の筋緊張を緩めることでナルコレプシーを完治させた、と書籍に書いておられます。オステオパシーを習い始めの私にとっては全く自分とは無関係、別世界の話でした。そんな難しい患者さんがウチに来るわけがないと思っていました。

そうしたら来たんですよ、ナルコレプシーの患者さんが。予約のメールにお困りの症状を入力していただくのですけれど、「ナルコレプシー」という文字を見たときはびっくりしました。ただ、師匠の臨床例から頭蓋仙骨療法が有効そうであることはわかっていましたし、患者さんも師匠の本を読んで末弟の私のところへおいでになったそうです。

原因不明とは言われていますが、ナルコレプシーの原因について言及している書籍をそれまでに私は読んでいました。高橋幸吉という民間療法家の書いた本に「頭部の打撲の後遺症が原因であ」ると書かれていて私は実際のところどうなのか興味津々でした。当日になって患者さんがおいでになり、「発作が起きるようになったのはいつからですか」と伺うと小さいころプールサイドで転んで頭を打ってから、という答えが返ってきました。高橋氏は打撲したところを中心に直径6から10センチほど楕円形に筋肉が硬化している、と書いておられましたが私にはそれは感じられませんでした。ただ、頭を打ったと言っておられる後頭骨のあたりの頭蓋骨の動きは制限されているようでした。

一通り頭蓋オステオパシーの施術を行って、次週拝見するとずいぶん調子がいいと喜んでおられました。それ以降数回施術して改善はしていたのですが先方の事情で施術を継続できず完治に至らなかったのは残念でした。難病、と言われる症状であっちこっちの病院へ行っても効果のなかったものがたかだか整骨院で治るわけない、そういって施術の継続にご家族が反対されるケースは何回も経験しているのですがこの時もそうだったのでしょうか。

さて、頭蓋骨の中で脳は呼吸しています。肺呼吸ではなく脳脊髄液を吸収したり排出したりするのが脳の呼吸です。私たちが肺呼吸するときに胸郭が膨れたり収縮したりするように、脳が脳脊髄液を呼吸するときも頭蓋骨がわずかながら膨れたり収縮したりします。頭蓋オステオパシーというのはこの脳の呼吸がうまく行われるように頭蓋骨の緊張を調整していくのですが、意図的に脳の呼吸をストップさせる手技があります。ごく軽い力で後頭骨を圧迫して脳脊髄液の循環を遮るのです。

そうすると一時的に脳は呼吸をストップさせます。この状態を静止点とかスティルポイントとか呼びます。しばらくするとより力強い呼吸をはじめ、それに伴い自然治癒力もアップします。それでこの脳が呼吸を止めている間、頭蓋オステオパシーを受けている患者さんは「ことん」と眠りに落ちます。ひょっとしたら頭を打った時に頭蓋骨が圧縮された状態になって脳がランダムに静止点に入る状態がナルコレプシーではないか、と考えています。それなら頭蓋オステオパシーでナルコレプシーの患者さんを改善させることだってできると思っているのですが、現実はなかなか難しいようです。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です