コロナの後遺症で「あたまに霧がかかったよう」な患者さん

ウイルス

定期的に伺っている広島市のF医院さまでオステオパシー整体の施術をしてきました。初めに拝見したのは高齢のご夫婦で、新型コロナ罹患後、「あたまに霧がかかったよう」というのが主訴です。COVID-19の「後遺症」のひとつにブレインフォグというのがあって、まさにその状態です。いわゆる後遺症は基本的に自律神経の変調だと考えられます。「倦怠感」「嗅覚異常」「集中力低下」などの症状はまさにそうですよね。

自律神経には交感神経と副交感神経とがあることはよく知られています。前者は活動をオンにする、戦闘モードに切り替える働きをします。後者は活動をオフ、リラックスモードに切り替える働きをする、とされてきました。ところが最近の研究では副交感神経には、二種類あることがわかってきました。副交感神経と言われて私たちがイメージするのが「腹側迷走神経」。それとは別に絶体絶命のピンチの際に心身の働きを一切シャットアウトしていわば凍りつかせる「背側迷走神経」とに分けられる、ということです。背側迷走神経の働きは言ってみれば「死んだふり」をすることで身を守ろうとする生体防御反応ということができます。

後遺症の症状は明らかに活動がストップしているわけで、背側迷走神経によるものと考えました。COVID-19は「新型」という名称の通り、今まで人類が未経験のウイルスです。そのため感染者の自律神経はこれと戦うことをあきらめ、「死んだふり」をすることで身を守ろうとするのでしょう。

オステオパシー整体に限らず、手技療法一般(もしかしたら物理療法全般、かもしれません)は身体の緊張を緩和することで心身の不調を改善してきました。心身を副交感神経優位にもっていくことを目的としていたわけです。ところがCOVID-19の「後遺症」は心身が副交感神経(であるところの背側迷走神経)優位になることで起きています。それで今まで、後遺症の患者さんには心身を交感神経優位にもっていくような手技を行って成果を上げていました。手法そのものは造作もないことで、従来の手技とやることを逆にしてみればいいだけのことです。

今回も同じような処方で施術を行ったのですが、それに加えて鎖骨下の圧痛を触診して、トラウマの有無を調べてみようと考えました。COVID-19に罹患した症状そのものももちろんトラウマではあるでしょうが、患者さんの脳も、無意識のうちにではありますが未知のウイルスへの感染をトラウマととらえているはずです。まずはご主人から施術開始。頭に軽く手を触れて調整していくと「気持ちいいですね…。」とおっしゃっていたのですがすぐに眠ってしまわれました。頭の調整が終わって、起こすのは申し訳なかったのですが鎖骨下の圧痛を確認して、それを解放する処置をしました。すると、「鎖骨の下から何かが流れるような感じがする。」とのこと。奥様にも同じ処方の施術をして、お二人ともその場で「霧がかかったよう」だった頭が楽になったと喜んでくださいました。

今まであれこれ考えたり実践したりしてきたことが、新型コロナでひとつにつながってきている感じがします。

追記:F先生から連絡がありました。施術から二日目で味覚と嗅覚が戻りつつある由です。同じような症例でうまくいかなかったケースもあるので一概には言えませんが、自律神経の調整がコロナの後遺症(罹患後症状)には結構有効なのは間違いなさそうです。

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