閃輝暗点はストレスを消すと治る

閃輝暗点

心身のトラウマに由来する症状は、鎖骨下の圧痛点を処置すると軽快する、ということに気が付きました。あおり運転の被害にあって恐怖感が抜けない、とか職場の人間関係でイヤで仕方がないことがあった、とかいう患者さんにも効果があることが確認できました。

鎖骨下のケアには二十余年にわたってご指導いただいている心療内科の先生がずいぶん関心を持ってくださって、いろんな症例を集めてくださいました。明らかなトラウマによる心身の不調、PTSDのほかに強いストレスを感じている症状にも奏功するよ、と教えてくださいました。ストレスが原因になって症状が起きたケースにも、症状がストレスになって症状をさらに増悪させるようなケースでも有効であることも確認できました。先生のお話ではどうも偏桃体に作用するようだね、との事でした。偏桃体というのは大脳辺縁系で情動を司る部位です。情動というのは怒りとか恐怖とか喜びとかの快・不快の本能的な感情と、それに伴う身体的反応のことを指します。トラウマやストレスが原因で偏桃体が活性化したままになると交感神経が暴走してしまいます。いつまでたっても治らない心身の不調はその結果、ということです。

私も真似していろんな症状の患者さんの鎖骨下を触診してみると、なるほどストレスを感じている患者さんには圧痛が認められますし、症状が軽減してくると圧痛を感じなくなるようです。怒りを我慢する表現に、「胸をさすって怒りを鎮める」というのがありますが、ひょっとしたら鎖骨下の圧痛のことかもしれないな、と考えるようになりました。まさに情動にかかわるということですね。

トラウマとかストレスに由来する症状のケアをするときに鎖骨下の圧痛を調べることの利点はほかにもあります。医師や心理職といった専門家ではない我々手技療法家が、カウンセリングの真似事をする必要がないことです。鎖骨下の圧痛の有無と程度によってトラウマやストレスの有無を判断できて、なおかつ治療も効果の判定も圧痛をモニターすることでできてしまうというのは結構画期的なことだと思うのですがいかがでしょうか。少なくともカウンセリングのトレーニングを受けていない私にとってはありがたいです。何より痛みやしんどさを改善するために治療院を受診したのにカウンセリングまがいに根掘り葉掘りあれこれ聞かれたのでは患者さんもたまったものではないでしょう。

もっとも施術で心身の緊張が緩んでくると問わず語りにいろいろな話を患者さんが自分から始めて、その中に原因となる出来事や感情が含まれていることは結構あるのですが。

原因不明とされる症状をケアするときにもこの手法は有効です。「閃輝暗点」という病気があります。突然視界に稲妻のようなギザギザの光の波が出現してだんだん広がっていきます。そのあとで片頭痛が起きます。芥川龍之介が晩年この病気に悩まされて、その経験をもとに「歯車」という小説を書きました。脳の血管の収縮と拡張が原因、と言われているのですが実際のところなかなか良くならないようです。病院で薬をもらっているのだけれど改善しないからどうにかならないか、いうご相談を受けたことがあります。

さっそく鎖骨下を触診してみると強い圧痛がありました。それを処置して頭蓋骨の制限を調整するとなんとそれだけで症状が取れてしまいました。患者さんは公私でご多忙だったという話は伺っていたのですが、たぶんそれを知らなくてもこのケースは治っていたと思います。この手法は健康雑誌「壮快」さまに「鎖骨ストレッチ」として掲載していただき、のちにマキノ出版者さまのムック本にも再録されました。

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