コロナ禍で顎関節症になりやすい理由

咬筋

顎関節症というのは様々な理由で「顎が痛くて口が開けられない」症状の総称です。教科書的な分類では1.靭帯、関節包の問題2.咀嚼筋の問題 3.関節円板の問題 4.変形性顎関節症 5.その他(精神的なストレスによるもの)に分けられます。治療法として一般的なのは咀嚼筋、特に咬筋の調整でしょうか。様々な物理療法(鍼灸、電気、温熱療法など)で咬筋を緩めてから下顎骨をストレッチするような手技が多いと思います。患者さんを横向きに寝かせておいて、カイロプラクティックのドロップテーブルで顎関節を調整する手法をどこかの学会で見たことがあります。

「顎関節」というのは正確には「側頭下顎関節」です。側頭骨(耳のあたりの骨)と下顎骨との関節。側頭骨から下顎骨がぶら下がるような感じで顎関節は構成されています。だから下顎骨や筋肉を調整しても側頭骨に問題があれば意味を成しません。どういうわけか顎関節症の治療といったときに側頭骨に言及する人があまりいないのが現状です。頭蓋骨の調整という発想が現代医学には存在しないのが原因なのかもしれません。

顎関節症の治療で、「噛み合わせ」に注目する人もいます。噛み合わせを治療するときはマウスピースをはめたり歯を削って調整するのが主流のようです。生き物である人間の歯が、機械みたいに上下ぴったり合わさる必要があるのかどうかは歯科の門外漢ですからわかりませんが、上顎骨が歪むと上下の歯の嚙み合わせのバランスは崩れると思います。上顎骨は左右で一対の骨です。例えば抜歯であったり顔面を何かにぶつけたりしたときに左右の上顎骨が歪んでしまえば下顎に生えている歯との噛み合わせのバランスは破綻すると思います。逆に言えば上顎骨を徒手的に調整すれば噛み合わせは改善する可能性があるでしょう。これもやっぱり頭蓋骨の調整という発想が必要となります。

顎関節症ではどうしても下顎骨に注目が集まってしまいますが、側頭骨や上顎骨との関係を調整することで従来の治療法でうまく改善しなかった顎関節症に対応してきました。おおむね効果はあったように思います。側頭骨や上顎骨に歪みが生じるとそれだけで様々な不定愁訴の原因になります。そういった症状も顎関節症と一緒に改善するということもぜひ知っておいてください。

コロナ禍で、顎関節の不調を訴える方が多くなってきているような印象を受けます。その原因のひとつはストレスでしょう。コロナによって生活が一変してしまったこと、それと前後して社会情勢が不安定になってきたことなどが引き金になって発症した顎関節症はきっと多いでしょうね。

コロナによってテレワークが増えたことも顎関節症の増加要因のひとつだと思います。テレワークでは間断なくパソコン画面を見ています。医学的にどういう説明ができるのか知りませんけれど、眼と顎関節はシンクロしているようで、不思議なことに眼が疲れると咬筋の緊張が強くなってしまいます。口を開けにくいだけではなく咀嚼がスムーズにいかなくなるようで、ずっとパソコンを見ていてひどく眼が疲れたときって、食事中に口の中を噛んだりしませんか。

それからもう一つの要因がマスクです。マスクをかけっぱなしにすることで頬骨が圧迫されてその力が上顎骨に波及します。マスクのゴムによってずっと耳が引っ張られていますから、当然側頭骨にも影響します。顎関節を下顎骨と構成する側頭骨、上顎骨がいずれもマスクで影響を受けます。マスクのゴムの引っ張る力は大きくありませんが、オステオパシー整体で頭蓋骨を調整するときの力も約5グラムと言われていますから、マスクのゴムは頭蓋骨を歪ませるのに十分な強さがあるといえるでしょう。

「なんか口が開けにくいな」「食事中口の中を噛んでしまう」こういう時はマスクを外して遠くの景色を見てお気に入りの音楽を聴いてちょっと休むようにしてください。

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