むち打ち損傷はなぜなかなか治らないのか

脊椎

むち打ち損傷でお困りの方は多いと思います。整形外科ではらちが明かず、整骨院に毎日通院しても一進一退、そのうちに保険を使い切ってしまってどうしようもなくなった、という方を何人も拝見してきました。

それではそもそもむち打ち損傷とはどんなものでしょうか?整形外科的には頚部、または頸椎の捻挫ということになります。ただ、急性期の症状が消退してからの処置によって予後が変わってくることに注意する必要があります。整形外科の教科書には「重傷当初に頸椎カラー装着で頚部の安静固定を、並びに急性期症状の軽快後にリハビリテーションを怠ると、バレ・リュウ症候群で代表される他覚所見の乏しい愁訴がいつまでも持続することがある。」と書かれています。

急性期(けがをしてすぐ)の処置は画像診断を含めて病院に行かれることをお勧めします。診断の手立てを持たない治療院はこの時点では全く無力です。急性期が過ぎると、リハビリテーションということになります。まずは頸椎の牽引でしょうか。でも、むち打ち損傷という名前の通り追突されて頚部が急激に前後に曲げ伸ばしを強制されて頸椎を傷めた、ということですよね。前後にゆがんだ頸椎を上下に牽引してもまっすぐにはならないだろうことは簡単に予想がつきます。

実際、むち打ち損傷が「治った」あとで頚部の不快な引っかかり感が残存しているケースは決して少なくありません。それは頸椎を上下に引っ張るリハビリテーションの当然の帰結といえるでしょう。そういう患者さんの頚部を触診してみるとたいていのケースでは第3,4頸椎に圧痛があります。椎骨がずれる、という言い方が本当に正しいのかどうかはわかりませんが、椎骨の動きが悪く圧痛があることは間違いありません。頸椎の調整というと首を捻って骨を鳴らす手技を想像しますが、当院ではストレイン・カウンターストレインというごく軽い力での椎骨調整を行います。

いわゆる頸椎捻挫であればこれでほぼ軽快してくれるのですが、まれにすぐ元に戻ってしまうケースがあります。こういう時はたいてい仙骨に問題があります。頸の痛みが主訴の患者さんの骨盤を触診すると怪訝な顔をされるのですが、丁寧に触診してみると強烈な圧痛が見つかります。それを調整すると、たいていは頸椎の痛みや引っ掛かりは再発しなくなります。

脊柱はひとつながりになっていますから、仙骨の動きが悪ければそれは頸椎に波及しますし、その逆もあります。調整して症状が軽快してもまたすぐに元に戻ってしまうのであれば、どこかにほかの原因があるはずです。追突のショックで仙骨が影響を受けたのか、もとから仙骨の動きが良くなくて追突されたときにたまたま頸椎に症状が出たのかはわかりません。ただ、人体はひとつのユニットですから局所だけにとらわれず何か問題があればそこを調整して自然治癒力に任せる、というのがオステオパシーのセオリーです。

画像には映ってこない椎骨の動きの悪さとか圧痛、局所のみにとらわれた診方のままリハビリテーションを続けていると、やがてバレ・リュウ症候群へと移行していきます。

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